気鋭の群像Young Japanese Hematologist
青木智広カナダ・プリンセスマーガレットがんセンター 腫瘍・血液内科 クリニシャン・サイエンティスト(スタッフ ヘマトロジスト)/トロント大学 アシスタントプロフェッサー
カナダ・トロントでリンパ腫のラボを開設
Clinician Scientistとして臨床にも携わる2024年10月に、カナダのトロント大学、プリンセスマーガレットがんセンターにラボを開設した青木智広氏。学生時代は循環器科を目指していたが、初期研修後は血液内科の道に進み、いまの治療で治せない患者を治すためには基礎研究が必要だと考えるようになった。大学院では腫瘍細胞と微小環境の細胞との関係の解明に取り組み、留学先のカナダで両者の新たなマーカーを見出した。研究をさらに進める一方、仕事の2割を臨床に振り分け、Clinician Scientistとしてリンパ腫の診療にも取り組んでいる。
Clinician Scientistとして臨床にも携わる2024年10月に、カナダのトロント大学、プリンセスマーガレットがんセンターにラボを開設した青木智広氏。学生時代は循環器科を目指していたが、初期研修後は血液内科の道に進み、いまの治療で治せない患者を治すためには基礎研究が必要だと考えるようになった。大学院では腫瘍細胞と微小環境の細胞との関係の解明に取り組み、留学先のカナダで両者の新たなマーカーを見出した。研究をさらに進める一方、仕事の2割を臨床に振り分け、Clinician Scientistとしてリンパ腫の診療にも取り組んでいる。
武藤朋也国立がん研究センター研究所 がんRNA研究分野 主任研究員
憧れの臨床医から米国留学を経て基礎研究の道に
国立がん研究センターで新天地を切り拓く病院で働く医師に憧れ、血液内科医としてキャリアを重ねたのち、大学院で基礎研究に打ち込んだことで、進路が変わり始めた武藤朋也氏。5年間の米国留学を終え、一旦は大学の助教として臨床・教育・研究に取り組んだが、研究に打ち込める環境を選び、2023年4月に国立がん研究センター研究所の主任研究員として新たな道を歩み始めた。焦り過ぎず、しかし早期に研究成果を出したいと抱負を語る。
国立がん研究センターで新天地を切り拓く病院で働く医師に憧れ、血液内科医としてキャリアを重ねたのち、大学院で基礎研究に打ち込んだことで、進路が変わり始めた武藤朋也氏。5年間の米国留学を終え、一旦は大学の助教として臨床・教育・研究に取り組んだが、研究に打ち込める環境を選び、2023年4月に国立がん研究センター研究所の主任研究員として新たな道を歩み始めた。焦り過ぎず、しかし早期に研究成果を出したいと抱負を語る。
早瀬英子MDアンダーソンがんセンター Department of Genomic Medicine
腸管GVHDのムチン層分解の機序を解明
米国でPIを目指し新たなチャレンジへ初期臨床研修医を2年間、血液内科で臨床医を4年間務めた後、子育てをしながらGVHDの新しい治療法に関する研究を始めた早瀬英子氏。2018年から米国・MDアンダーソンがんセンターに留学し、広域スペクトラムの抗菌薬による腸管GVHD悪化の機序を解明し、治療への道筋もつけた。この研究成果が『Cell』誌に掲載されたことを機に、早瀬氏は米国での新たな研究拠点作りにチャレンジしている。
米国でPIを目指し新たなチャレンジへ初期臨床研修医を2年間、血液内科で臨床医を4年間務めた後、子育てをしながらGVHDの新しい治療法に関する研究を始めた早瀬英子氏。2018年から米国・MDアンダーソンがんセンターに留学し、広域スペクトラムの抗菌薬による腸管GVHD悪化の機序を解明し、治療への道筋もつけた。この研究成果が『Cell』誌に掲載されたことを機に、早瀬氏は米国での新たな研究拠点作りにチャレンジしている。
藤本亜弓島根大学 血液・腫瘍内科学 客員研究員、がん研究会 がん研究所 分子標的病理プロジェクト 研究生
移植のダイナミックさに魅かれて血液内科医に
その後、リンパ腫の面白さに気づく大学生時代に造血幹細胞移植で白血病の若い患者が助かる様子を目の当たりにし、血液内科医の道に進んだ藤本亜弓氏は、血液内科の後期研修医となった後に、データベースを用いた悪性リンパ腫に関する臨床研究に携わった。その後、統計解析手法を学び、現在はリンパ腫の病理診断を学びながら、新たな研究に取り組んでいる。
その後、リンパ腫の面白さに気づく大学生時代に造血幹細胞移植で白血病の若い患者が助かる様子を目の当たりにし、血液内科医の道に進んだ藤本亜弓氏は、血液内科の後期研修医となった後に、データベースを用いた悪性リンパ腫に関する臨床研究に携わった。その後、統計解析手法を学び、現在はリンパ腫の病理診断を学びながら、新たな研究に取り組んでいる。
白石友一国立がん研究センター研究所 ゲノム解析基盤開発分野 分野長
統計学から血液疾患のゲノム解析の道へ
がんゲノムの配列と構造の完全な再現を目指す大学院時代は数理統計学の研究に従事し、その後、次世代シークエンサー(NGS)の情報解析パイプライン開発をきっかけに血液学との関連を深めるようになった白石友一氏。現在は、国立がん研究センター研究所でゲノム解析のプラットフォームの開発を進めている。特に、公共オミクスデータレポジトリからの知識獲得基盤の構築、さらに最新のシークエンス技術を駆使してがんゲノムの配列と構造を完全に再現することを目指して日々研究を進めている。
がんゲノムの配列と構造の完全な再現を目指す大学院時代は数理統計学の研究に従事し、その後、次世代シークエンサー(NGS)の情報解析パイプライン開発をきっかけに血液学との関連を深めるようになった白石友一氏。現在は、国立がん研究センター研究所でゲノム解析のプラットフォームの開発を進めている。特に、公共オミクスデータレポジトリからの知識獲得基盤の構築、さらに最新のシークエンス技術を駆使してがんゲノムの配列と構造を完全に再現することを目指して日々研究を進めている。
竹田玲奈ダナ・ファーバーがん研究所 小児腫瘍分野
“国際的に活躍する女性”を目指し
臨床と研究の実績を積み米国留学へ この春、米国・ダナ・ファーバーがん研究所に留学した竹田玲奈氏は、中学時代に「国際的に活躍する女性になりたい」と心に決め、その第一歩として日本医科大学に入学し、在学中から留学を目指し短期留学を重ねた。初期研修後には血液内科の道に進み、臨床経験を積んだ上で、大学院時代には国際学会で研究成果を発表するなど、目標に向かって邁進してきた。そしてコロナ禍で予定より2年遅れたが、米国留学を実現した。将来は女性の医学研究者のキャリアアップのサポートもしていきたいと意欲はさらに増している。
臨床と研究の実績を積み米国留学へ この春、米国・ダナ・ファーバーがん研究所に留学した竹田玲奈氏は、中学時代に「国際的に活躍する女性になりたい」と心に決め、その第一歩として日本医科大学に入学し、在学中から留学を目指し短期留学を重ねた。初期研修後には血液内科の道に進み、臨床経験を積んだ上で、大学院時代には国際学会で研究成果を発表するなど、目標に向かって邁進してきた。そしてコロナ禍で予定より2年遅れたが、米国留学を実現した。将来は女性の医学研究者のキャリアアップのサポートもしていきたいと意欲はさらに増している。
井上大地神戸医療産業都市推進機構 先端医療研究センター 血液・腫瘍研究部 部長
神戸発、東京・NY経由、神戸行き
臨床好きな若きPIの奮闘血液内科を中心に5年間の臨床経験を積み、その後、研究者として骨髄異形成症候群(MDS)におけるASXL1変異に関する研究の黎明期を支え、米国留学中にはスプライシングなどの転写後制御異常によるがん発症のメカニズム解明などの成果を上げてきた井上大地氏。米国から帰国後の2019年に神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センターに新たなラボを立ち上げた。一つ所にとどまらず、新しい環境で新たなテーマに取り組んできた井上氏は、今度はPIとしてチーム一人ひとりの力を伸ばすことに力を注いでいる。
臨床好きな若きPIの奮闘血液内科を中心に5年間の臨床経験を積み、その後、研究者として骨髄異形成症候群(MDS)におけるASXL1変異に関する研究の黎明期を支え、米国留学中にはスプライシングなどの転写後制御異常によるがん発症のメカニズム解明などの成果を上げてきた井上大地氏。米国から帰国後の2019年に神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センターに新たなラボを立ち上げた。一つ所にとどまらず、新しい環境で新たなテーマに取り組んできた井上氏は、今度はPIとしてチーム一人ひとりの力を伸ばすことに力を注いでいる。
宮脇恒太九州大学大学院 医学研究院 病態修復内科学(第一内科) 血液・腫瘍・心血管内科
リンパ腫の予後を規定する微小環境遺伝子を同定
腫瘍細胞との関わりを最新手法で解明へ悪性リンパ腫の腫瘍細胞と微小環境細胞との関わりについて研究を進める九州大学大学院病態修復内科学の宮脇恒太氏。nCounterやCODEXなどの最新機器を駆使して、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の新規層別化モデルを開発し、微小環境による予後規定メカニズムを明らかにしつつある。「研究はまだ途上。研究を発展させ、新しい予後モデル、治療戦略の開発を臨床現場に還元したい」と意気込む。
腫瘍細胞との関わりを最新手法で解明へ悪性リンパ腫の腫瘍細胞と微小環境細胞との関わりについて研究を進める九州大学大学院病態修復内科学の宮脇恒太氏。nCounterやCODEXなどの最新機器を駆使して、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の新規層別化モデルを開発し、微小環境による予後規定メカニズムを明らかにしつつある。「研究はまだ途上。研究を発展させ、新しい予後モデル、治療戦略の開発を臨床現場に還元したい」と意気込む。
中村恭平クイーンズランド医学研究所(QIMRB) 主任研究員
豪州に渡って5年、独立してラボを持つ
骨髄腫の腫瘍免疫を中心に研究を進める2020年6月にオーストラリア・クイーンズランド医学研究所(QIMRB)の主任研究員(PI)としてラボを開設した中村恭平氏。東北大学でNK細胞の研究をし、その後、腫瘍免疫の研究に転じた。海外で自立できる力を身に付けるべくオーストラリアに留学、5年後にPIとなった。研究成果の臨床応用も視野に入るが、まずは腫瘍免疫の基本メカニズムの解明を進めていくという。
骨髄腫の腫瘍免疫を中心に研究を進める2020年6月にオーストラリア・クイーンズランド医学研究所(QIMRB)の主任研究員(PI)としてラボを開設した中村恭平氏。東北大学でNK細胞の研究をし、その後、腫瘍免疫の研究に転じた。海外で自立できる力を身に付けるべくオーストラリアに留学、5年後にPIとなった。研究成果の臨床応用も視野に入るが、まずは腫瘍免疫の基本メカニズムの解明を進めていくという。
遠西大輔岡山大学病院 ゲノム医療総合推進センター 血液・腫瘍内科 准教授
TMEM30A遺伝子の多面的な機能を明らかに
カナダでのB細胞性リンパ腫の研究が結実2019年11月に岡山大学病院の血液・腫瘍・呼吸器内科学から、同大病院ゲノム医療総合推進センターに異動した遠西大輔氏。これまで、カナダにおけるB細胞性リンパ腫に関わる遺伝子解析を報告してきたが、その最終データとなる論文が2020年4月に『Nature Medicine』に掲載された。これまでの研究に一区切りをつけ、急速に進むがんゲノム医療の臨床実装に取り組みながら、ライフワークである悪性リンパ腫の研究とのコラボレーションの実現に意欲を燃やしている。
カナダでのB細胞性リンパ腫の研究が結実2019年11月に岡山大学病院の血液・腫瘍・呼吸器内科学から、同大病院ゲノム医療総合推進センターに異動した遠西大輔氏。これまで、カナダにおけるB細胞性リンパ腫に関わる遺伝子解析を報告してきたが、その最終データとなる論文が2020年4月に『Nature Medicine』に掲載された。これまでの研究に一区切りをつけ、急速に進むがんゲノム医療の臨床実装に取り組みながら、ライフワークである悪性リンパ腫の研究とのコラボレーションの実現に意欲を燃やしている。
吉見昭秀スローンケタリング記念がんセンター シニア研究員
スプライシング異常による発がん機構の解明へ
研究拠点を米国から日本に移し、取り組む吉見昭秀氏は米国・スローンケタリング記念がんセンターでの約5年にわたる米国での研究成果を引っ提げ、2020年7月から国立がん研究センターに研究拠点を移す。米国での研究テーマは“スプライシング異常による造血器腫瘍の発症機序の解明”。スプライシングを司る因子の変異によってどんなことが起こるのか、そしてどう治療するのか。世界で研究が進む領域でトップを目指し、新たな環境での挑戦が始まる。
研究拠点を米国から日本に移し、取り組む吉見昭秀氏は米国・スローンケタリング記念がんセンターでの約5年にわたる米国での研究成果を引っ提げ、2020年7月から国立がん研究センターに研究拠点を移す。米国での研究テーマは“スプライシング異常による造血器腫瘍の発症機序の解明”。スプライシングを司る因子の変異によってどんなことが起こるのか、そしてどう治療するのか。世界で研究が進む領域でトップを目指し、新たな環境での挑戦が始まる。
高橋康一MDアンダーソンがんセンター 白血病科・ゲノム医療科 アシスタント・プロフェッサー
米国でphysician scientistとして独立する
治療関連白血病とクローン性造血を研究テーマに大学卒業後8年目の夏に米国・MDアンダーソンがんセンターの白血病科・ゲノム医療科のファカルティとなり、ラボを構えている高橋康一氏。Physician scientistだからこそできる臨床と研究の双方から得た発見や経験をベースに、治療関連白血病の克服とクローン性造血のメカニズムの解明という、2つの大きな研究テーマに取り組んでいる。
治療関連白血病とクローン性造血を研究テーマに大学卒業後8年目の夏に米国・MDアンダーソンがんセンターの白血病科・ゲノム医療科のファカルティとなり、ラボを構えている高橋康一氏。Physician scientistだからこそできる臨床と研究の双方から得た発見や経験をベースに、治療関連白血病の克服とクローン性造血のメカニズムの解明という、2つの大きな研究テーマに取り組んでいる。
佐々木宏治MDアンダーソンがんセンター 白血病科 アシスタントプロフェッサー
目指すは最善の治療法の追求
医学、生物学、統計学を駆使し挑む米国・MDアンダーソンがんセンターの佐々木宏治氏は、白血病を中心に基礎研究、臨床研究を重ね、2019年9月に同センターの慢性骨髄性白血病(CML)部門のリーダーとなった。医学・生物学だけでなく、得意の数学や統計学の知識をベースに、機械学習モデルを用いて様々な臨床背景を持つ患者と多様な生物学的背景を持つ疾患の組み合わせから、最善の治療法を提案する次世代個別化医療という夢の実現に向かって突き進んでいる。
医学、生物学、統計学を駆使し挑む米国・MDアンダーソンがんセンターの佐々木宏治氏は、白血病を中心に基礎研究、臨床研究を重ね、2019年9月に同センターの慢性骨髄性白血病(CML)部門のリーダーとなった。医学・生物学だけでなく、得意の数学や統計学の知識をベースに、機械学習モデルを用いて様々な臨床背景を持つ患者と多様な生物学的背景を持つ疾患の組み合わせから、最善の治療法を提案する次世代個別化医療という夢の実現に向かって突き進んでいる。
細野奈穂子福井大学 医学部 血液・腫瘍内科 講師
染色体欠失部位から疾患責任遺伝子を同定
MDS/AMLの研究と臨床の両立を目指す骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)など骨髄系腫瘍で欠失が多く見られる第5染色体や第7染色体についての遺伝子変異の解析に取り組んできた、福井大学医学部血液・腫瘍内科の細野奈穂子氏。第5、第7染色体上の疾患責任遺伝子変異とそれによる骨髄系腫瘍の分子病態の解明を進め、それらの結果を、第80回日本血液学会学術集会のシンポジウム「Rising stars in JSH」で報告した。血液内科医として患者に寄り添いながら、一方でMDS/AMLの研究も進めていくと今後を見据える。
MDS/AMLの研究と臨床の両立を目指す骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)など骨髄系腫瘍で欠失が多く見られる第5染色体や第7染色体についての遺伝子変異の解析に取り組んできた、福井大学医学部血液・腫瘍内科の細野奈穂子氏。第5、第7染色体上の疾患責任遺伝子変異とそれによる骨髄系腫瘍の分子病態の解明を進め、それらの結果を、第80回日本血液学会学術集会のシンポジウム「Rising stars in JSH」で報告した。血液内科医として患者に寄り添いながら、一方でMDS/AMLの研究も進めていくと今後を見据える。
林嘉宏東京薬科大学 生命科学部生命医科学科 腫瘍医科学研究室 講師
「MDSの病態形成にHIF1Aが中心的役割」を証明
主流とは異なる目線で研究に取り組み続ける骨髄異形成症候群(MDS)では、数多くの遺伝子変異が同定されてきたが、その発症機序は未だ明らかとなっていない。一方で、MDSを臨床的に特徴づける主な表現型は、遺伝子異常の種類によらず共通している。東京薬科大学腫瘍医科学研究室の林嘉宏氏はここに着目し、細胞の増殖やアポトーシス、造血幹細胞や免疫細胞の制御などに関わる遺伝子群の発現を制御するHypoxia inducible factor-1α(HIF1A)が、MDSの病態形成において中心的役割を果たすことを明らかにした。「“主流”とは異なる目線で研究に取り組んだ成果。今後も人とは違うアプローチで仮説を立て検証を続けていく」と前を向く。
主流とは異なる目線で研究に取り組み続ける骨髄異形成症候群(MDS)では、数多くの遺伝子変異が同定されてきたが、その発症機序は未だ明らかとなっていない。一方で、MDSを臨床的に特徴づける主な表現型は、遺伝子異常の種類によらず共通している。東京薬科大学腫瘍医科学研究室の林嘉宏氏はここに着目し、細胞の増殖やアポトーシス、造血幹細胞や免疫細胞の制御などに関わる遺伝子群の発現を制御するHypoxia inducible factor-1α(HIF1A)が、MDSの病態形成において中心的役割を果たすことを明らかにした。「“主流”とは異なる目線で研究に取り組んだ成果。今後も人とは違うアプローチで仮説を立て検証を続けていく」と前を向く。
宮﨑香奈三重大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学 助教
「町の医者」が手作りの臨床試験を完遂
CD5陽性DLBCLの新しい治療法の開発に道筋びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の中でも予後不良とされるCD5陽性DLBCLの予後改善に向け、10年近くにわたり新規治療法の開発に取り組んできた、三重大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学の宮﨑香奈氏。dose-adjusted EPOCH-R療法と大量メトトレキサート療法を組み合わせた治療法による前向きの多施設共同第Ⅱ相試験の解析結果を2018年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で報告し、新規治療法の開発への道筋を付けた。
CD5陽性DLBCLの新しい治療法の開発に道筋びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の中でも予後不良とされるCD5陽性DLBCLの予後改善に向け、10年近くにわたり新規治療法の開発に取り組んできた、三重大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学の宮﨑香奈氏。dose-adjusted EPOCH-R療法と大量メトトレキサート療法を組み合わせた治療法による前向きの多施設共同第Ⅱ相試験の解析結果を2018年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で報告し、新規治療法の開発への道筋を付けた。
小山幹子フレッド・ハッチンソン癌研究センター シニア研究員
日豪米でGVHD発症機序の解明に取り組む
研究は興味と刺激が尽きない冒険のようなもの造血幹細胞移植後のGVHDについては、現在でこそ多くの研究が行なわれているが、1990年代後半まではその発症機序はほとんど解明されていなかった。フレッド・ハッチンソン癌研究センターの小山幹子氏は、研修医時代に移植患者を受け持った経験からGVHDの研究に踏み込み、以来一貫してGVHDの発症を解明する研究に取り組んできた。研究成果の中では、これまでの常識を覆し、非造血系の抗原提示細胞が急性GVHDの発症に必須であることも明らかにしている。2018年12月から、研究の場をオーストラリアから米国に移し、これまでの基礎研究で得られた知見を臨床に応用すべく、新たなアプローチを始めた。
研究は興味と刺激が尽きない冒険のようなもの造血幹細胞移植後のGVHDについては、現在でこそ多くの研究が行なわれているが、1990年代後半まではその発症機序はほとんど解明されていなかった。フレッド・ハッチンソン癌研究センターの小山幹子氏は、研修医時代に移植患者を受け持った経験からGVHDの研究に踏み込み、以来一貫してGVHDの発症を解明する研究に取り組んできた。研究成果の中では、これまでの常識を覆し、非造血系の抗原提示細胞が急性GVHDの発症に必須であることも明らかにしている。2018年12月から、研究の場をオーストラリアから米国に移し、これまでの基礎研究で得られた知見を臨床に応用すべく、新たなアプローチを始めた。
諫田淳也京都大学大学院 医学研究科 血液・腫瘍内科学 助教
移植ソースの拡大、GVHD予防法の進歩に応じて
HLA適合度と移植成績の関連を多面的に解析HLA不適合の造血幹細胞移植では、重症GVHD発症や移植関連死亡リスクが上昇するが、移植ソースの拡大や新たなGVHD予防法の開発によって、HLA不適合の意義も複雑化している。京都大学大学院血液・腫瘍内科学の諫田淳也氏は、造血幹細胞移植におけるHLA不適合や、移植ソース、GVHD予防法の違いによる移植成績への影響などを多面的に解析してきた。そして、移植技術の進歩につれて変わるHLA不適合の意義について国際的なレベルでの解析も進めている。
HLA適合度と移植成績の関連を多面的に解析HLA不適合の造血幹細胞移植では、重症GVHD発症や移植関連死亡リスクが上昇するが、移植ソースの拡大や新たなGVHD予防法の開発によって、HLA不適合の意義も複雑化している。京都大学大学院血液・腫瘍内科学の諫田淳也氏は、造血幹細胞移植におけるHLA不適合や、移植ソース、GVHD予防法の違いによる移植成績への影響などを多面的に解析してきた。そして、移植技術の進歩につれて変わるHLA不適合の意義について国際的なレベルでの解析も進めている。
片岡圭亮国立がん研究センター研究所 分子腫瘍学分野 分野長
遺伝子解析、機能解析、臨床研究の3本柱で
悪性腫瘍における遺伝子異常の全体像の解明へ成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)におけるゲノム異常の全体像を網羅的に解析した研究を出発点に、ATLでは免疫チェックポイント分子の1つ、PD-L1の構造異常があることを突き止めた国立がん研究センター研究所の片岡圭亮氏。その後、他の悪性腫瘍でもPD-L1のゲノム異常があることを明らかにし、今後は、遺伝子解析、機能解析、臨床研究の3本柱ですべての悪性腫瘍に横断的にアプローチし、遺伝子異常の全体像の解明に挑んでいく。
悪性腫瘍における遺伝子異常の全体像の解明へ成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)におけるゲノム異常の全体像を網羅的に解析した研究を出発点に、ATLでは免疫チェックポイント分子の1つ、PD-L1の構造異常があることを突き止めた国立がん研究センター研究所の片岡圭亮氏。その後、他の悪性腫瘍でもPD-L1のゲノム異常があることを明らかにし、今後は、遺伝子解析、機能解析、臨床研究の3本柱ですべての悪性腫瘍に横断的にアプローチし、遺伝子異常の全体像の解明に挑んでいく。
佐藤荘大阪大学 微生物病研究所 自然免疫学分野 准教授
“疾患特異的マクロファージ”を同定
線維化した細胞を標的とした創薬へ自然免疫の中で重要な役割を果たしているマクロファージ。発見されてから100年以上もの間マクロファージは1種類しかないとされてきたが、大阪大学微生物病研究所自然免疫学分野の佐藤荘氏は、体内には複数種類のマクロファージ(疾患特異的マクロファージ)が存在することを明らかにした。
線維化した細胞を標的とした創薬へ自然免疫の中で重要な役割を果たしているマクロファージ。発見されてから100年以上もの間マクロファージは1種類しかないとされてきたが、大阪大学微生物病研究所自然免疫学分野の佐藤荘氏は、体内には複数種類のマクロファージ(疾患特異的マクロファージ)が存在することを明らかにした。
菊繁吉謙九州大学 大学院 応用病態修復学 講師
白血病幹細胞研究の最前線を走る
「どこから白血病は来るのか」の解明へ白血病幹細胞の同定の数年後から、その生物学的特徴、起源、発生プロセスなどの研究に取り組んできた九州大学大学院・応用病態修復学の菊繁吉謙氏。急性骨髄性白血病(AML)の根治のために、白血病幹細胞を治療標的ととらえ、特異的に発現する表面抗原TIM-3を同定し、新たな治療への道筋を付けた。慢性リンパ球性白血病の発症機構の解明も進めており、白血病治療のブレークスルーを目指し、日々研究に取り組んでいる。
「どこから白血病は来るのか」の解明へ白血病幹細胞の同定の数年後から、その生物学的特徴、起源、発生プロセスなどの研究に取り組んできた九州大学大学院・応用病態修復学の菊繁吉謙氏。急性骨髄性白血病(AML)の根治のために、白血病幹細胞を治療標的ととらえ、特異的に発現する表面抗原TIM-3を同定し、新たな治療への道筋を付けた。慢性リンパ球性白血病の発症機構の解明も進めており、白血病治療のブレークスルーを目指し、日々研究に取り組んでいる。
吉本桃子テキサス大学ヒューストン マックガヴァン医学校 幹細胞・再生医学研究センター アソシエイトプロフェッサー
米国に研究拠点を築いた原動力は粘り強く諦めない心。
小児科を出発点に造血幹細胞の起源を追いかける三重大学卒業後、小児科医として医学の道を進み始め、やがて造血幹細胞への興味を深め、ついに米国に自分の研究拠点を持つに至ったテキサス大学医学部ヒューストン校の吉本桃子氏。神戸、東京、京都と修業の場を移しながら、着実に研究成果を重ね、米国に渡った吉本氏をつき動かした力は“惚れっぽさ”であり、しつこく諦めない“粘り強さ”だった。臨床医から研究者への道のりを綴ってもらった。
小児科を出発点に造血幹細胞の起源を追いかける三重大学卒業後、小児科医として医学の道を進み始め、やがて造血幹細胞への興味を深め、ついに米国に自分の研究拠点を持つに至ったテキサス大学医学部ヒューストン校の吉本桃子氏。神戸、東京、京都と修業の場を移しながら、着実に研究成果を重ね、米国に渡った吉本氏をつき動かした力は“惚れっぽさ”であり、しつこく諦めない“粘り強さ”だった。臨床医から研究者への道のりを綴ってもらった。
横田明日美シンシナティ小児病院医療センター 実験血液学・腫瘍生物学部門 研究員
「血液の研究をしたい」一心で米国留学を実現
CMLからMDSまで幅広く分子病態解明に挑む高校生のときに持った血液細胞への興味を、大学生、大学院生、大学教員、そして米国留学中の今も抱き続け、「もっと知りたい」と静かな情熱を燃やすシンシナティ小児病院医療センター実験血液学・腫瘍生物学部門の横田明日美氏。慢性骨髄性白血病(CML)の治療薬開発、血液細胞分化でのRunx1の機能解明、CMLにおける転写因子の分子機序解明など多くの業績を持つ横田氏は、研究者としての独立を目指し、米国で研鑽を重ねている。
CMLからMDSまで幅広く分子病態解明に挑む高校生のときに持った血液細胞への興味を、大学生、大学院生、大学教員、そして米国留学中の今も抱き続け、「もっと知りたい」と静かな情熱を燃やすシンシナティ小児病院医療センター実験血液学・腫瘍生物学部門の横田明日美氏。慢性骨髄性白血病(CML)の治療薬開発、血液細胞分化でのRunx1の機能解明、CMLにおける転写因子の分子機序解明など多くの業績を持つ横田氏は、研究者としての独立を目指し、米国で研鑽を重ねている。
増田豪熊本大学大学院 生命科学研究部 微生物薬学分野 助教
カシミヤの質の評価から造血幹細胞の研究へ転進
プロテオミクスを駆使し蛋白質構造を次々解明毛織物のカシミヤに含まれる蛋白質の同定・定量の研究をきっかけに、プロテオミクスの“技”を洗練させ、細胞の膜蛋白質、さらには赤芽球の蛋白質の解析に取り組んできた、熊本大学大学院生命科学研究部微生物薬学分野の増田豪氏。胎児型ヘモグロビンの発現を2つの転写因子が独自に抑制することを明らかにし、2016年の『Science』誌に論文が掲載された。現在は造血幹細胞の自己複製と分化を制御する機構の解明を進めつつ、プロテオミクスを超える新たな技術を開発し、次なる飛躍を目指している。
プロテオミクスを駆使し蛋白質構造を次々解明毛織物のカシミヤに含まれる蛋白質の同定・定量の研究をきっかけに、プロテオミクスの“技”を洗練させ、細胞の膜蛋白質、さらには赤芽球の蛋白質の解析に取り組んできた、熊本大学大学院生命科学研究部微生物薬学分野の増田豪氏。胎児型ヘモグロビンの発現を2つの転写因子が独自に抑制することを明らかにし、2016年の『Science』誌に論文が掲載された。現在は造血幹細胞の自己複製と分化を制御する機構の解明を進めつつ、プロテオミクスを超える新たな技術を開発し、次なる飛躍を目指している。