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2019年10月の注目論文(Vol. 1)

柴山浩彦(大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学 准教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2019年10月分(Vol. 1)は、柴山浩彦氏が担当します。

Bortezomib, thalidomide, and dexamethasone with or without daratumumab before and after autologous stem-cell transplantation for newly diagnosed multiple myeloma (CASSIOPEIA): a randomised, open-label, phase 3 study.

Lancet. 394(10192):29-38

Moreau P, Attal M, Hulin C, Arnulf B, Belhadj K, Benboubker L, Béné MC, Broijl A, Caillon H, Caillot D, Corre J, Delforge M, Dejoie T, Doyen C, Facon T, Sonntag C, Fontan J, Garderet L, Jie KS, Karlin L, Kuhnowski F, Lambert J, Leleu X, Lenain P, Macro M, Mathiot C, Orsini-Piocelle F, Perrot A, Stoppa AM, van de Donk NW, Wuilleme S, Zweegman S, Kolb B, Touzeau C, Roussel M, Tiab M, Marolleau JP, Meuleman N, Vekemans MC, Westerman M, Klein SK, Levin MD, Fermand JP, Escoffre-Barbe M, Eveillard JR, Garidi R, Ahmadi T, Zhuang S, Chiu C, Pei L, de Boer C, Smith E, Deraedt W, Kampfenkel T, Schecter J, Vermeulen J, Avet-Loiseau H, Sonneveld P

ここに注目!

抗CD38抗体薬のダラツムマブ(Dara)を含んだレジメンが、初発MMに対し行なわれた第Ⅲ相試験としては、ALCYONE study(Dara-BMP vs BMP)とMAIA study(Dara-Ld vs Ld)がすでに論文発表されているが、両方とも、移植非適応の初発MMを対象とした試験であった。一方、CASSIOPEIA studyは、移植適応の初発MM 1,085例を対象に、Dara-BTd療法(n=543)とBTd療法(n=542)を比較したヨーロッパで実施された試験である。結果、主要評価項目の移植後100日時点でのsCR率は、29%と22%(Dara-BTd療法 vs BTd療法)であった。また、MFCによるMRD陰性率は、64%と44%(Dara-BTd療法 vs BTd療法)であった。G3/4の主な有害事象は、Dara-BTd療法 vs BTd療法で好中球減少は28%、15%、リンパ球減少は17%、10%、口内炎は13%、16%であり、安全性の面はDara併用によっても特に問題はないように思われた。Daraが、移植前のInduction治療としても有用であることが第Ⅲ相試験で初めて示された。

Oral Selinexor-Dexamethasone for Triple-Class Refractory Multiple Myeloma.

N Engl J Med. 381(8):727-738

Chari A, Vogl DT, Gavriatopoulou M, Nooka AK, Yee AJ, Huff CA, Moreau P, Dingli D, Cole C, Lonial S, Dimopoulos M, Stewart AK, Richter J, Vij R, Tuchman S, Raab MS, Weisel KC, Delforge M, Cornell RF, Kaminetzky D, Hoffman JE, Costa LJ, Parker TL, Levy M, Schreder M, Meuleman N, Frenzel L, Mohty M, Choquet S, Schiller G, Comenzo RL, Engelhardt M, Illmer T, Vlummens P, Doyen C, Facon T, Karlin L, Perrot A, Podar K, Kauffman MG, Shacham S, Li L, Tang S, Picklesimer C, Saint-Martin JR, Crochiere M, Chang H, Parekh S, Landesman Y, Shah J, Richardson PG, Jagannath S

ここに注目!

エクスポーチン1阻害剤のSelinexorが、PI、IMiDs、抗CD38抗体薬のうちの4~5剤に抵抗性となった難治性MMに対し21%の奏効率が得られたという結果は、昨年6月の「この論文に注目!」で取り上げた。その試験(第Ⅱ相STORM試験)の続報(Part2)が、症例数を増やしてNEJMに掲載された。対象は、前治療レジメン数が7(中央値)の、少なくともPIの1剤、IMiDsの1剤とダラツムマブに抵抗性を示すトリプルレフラクトリーの難治性MM患者122例であり、Selinexor 80mgとデキサメタゾン20mgを週2回投与されている。また、53%の症例でハイリスクの染色体異常がみられた。結果、全奏効率は26%、最小反応以上は39%であり、奏効期間の中央値は4.4カ月、PFSの中央値は3.7カ月、OSの中央値は8.6カ月であった。有害事象は、血小板減少症が73%にみられ、G3が25%、G4が33%であり、6例でG3以上の出血がみられている。現在使用可能な薬剤に抵抗性となった患者の予後は極めて不良であることから、そのような患者を対象に行なわれた試験として、価値がある結果と思われた。Selinexorの承認が待たれる。

Development of a prognostic model for overall survival in multiple myeloma using the Connect® MM Patient Registry.

Br J Haematol. 2019 Aug 5. [Epub ahead of print]

Terebelo HR, Abonour R, Gasparetto CJ, Toomey K, Durie BGM, Hardin JW, Jagannath S, Wagner L, Narang M, Flick ED, Srinivasan S, Yue L, Kitali A, Agarwal A, Rifkin RM; CONNECT MM Registry Investigators

ここに注目!

Connect MM Registry研究は、アメリカで実施されているMM患者の前向き登録研究である。2009年に開始し、2016年までに3,011例の臨床データおよび診断時の末梢血や骨髄血が、細胞、RNA、DNA、血漿の形で保存されており、Real worldの治療成績とこれらの相関関係が検討できる世界最大規模のMMデータベースである。今回の論文では、2009~2011年までのコホート1(n=1,493)を用いて、初診時の臨床データと生命予後の相関関係を調べた結果として、年齢、del(17p)の有無、3剤による治療の有無、歩行能力、ISS、孤立性形質細胞腫の有無、DMの既往歴、血小板数、ECOG-PS、血清Cre値の10項目による、3年、5年生存率のマトリックス表が作成されている。このデータはコホート2(2012~2016年)、MM-015試験、FIRST試験の3つのコホートで確認されている。この生存率マトリックス表は、MM患者の治療方針を決定するにあたって、極めて有用と思われた。ただし、日本人のデータを用いても同等の生存率が得られるかを検証する必要はある。