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この論文に注目!Focus On

2024年1月の注目論文(Vol. 2)

坂田(柳元)麻実子(筑波大学 医学医療系 血液内科 教授)

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血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2024年1月分(Vol. 2)は、坂田(柳元)麻実子氏が担当します。

Multiomic spatial landscape of innate immune cells at human central nervous system borders

Nat Med. 2023 Dec 20. doi: 10.1038/s41591-023-02673-1. Online ahead of print.

Roman Sankowski, Patrick Süß, Alexander Benkendorff, Chotima Böttcher, Camila Fernandez-Zapata, Chintan Chhatbar, Jonathan Cahueau, Gianni Monaco, Adrià Dalmau Gasull, Ashkan Khavaran, Jürgen Grauvogel, Christian Scheiwe, Mukesch Johannes Shah, Dieter Henrik Heiland, Oliver Schnell, Filiz Markfeld-Erol, Mirjam Kunze, Robert Zeiser, Josef Priller 10 11, Marco Prinz

ここに注目!

ヒトの中枢神経系(CNS)の自然免疫を構成する細胞には、脳実質に多数存在するマクロファージであるミクログリア、および脳の表在の様々な部位に存在するCNS関連マクロファージ(CAM)などが含まれる。著者らは、シングルセルRNAシーケンシング、質量サイトメトリー分析(CyTOF)およびシングルセル空間トランスクリプトミクス等の最新解析技術を組み合わせることで、ヒトの脳における自然免疫を構成する多彩なマクロファージについて、脳内の部位特異的な特徴、さらには胎児期と生後の脳を比較することで時期特異的な特徴について明らかにした。なお、これまでの研究では、脳実質のミクログリアは胎児期から脳に存在して局所で増殖する一方、CAMは生後骨髄から恒常的に供給されると考えられてきたが、昨今、一部のCAMは胎児期から存在することが示されていた。著者らは、異性間末梢血幹細胞移植術後(男性→女性)の脳における多彩なマクロファージについて、Y染色体の分布を調べることにより、脳の表在の様々な部位に存在するCAMのターンオーバーの違いについても明らかにした。さらには、髄芽腫におけるマクロファージには低酸素に関わる特性が見られることを明らかにした。脳は我々がこれまでに想像していたよりも遥かに免疫学的にアクティブな場であるということを丁寧に示した興味深い研究である。