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2018年5月の注目論文(Vol. 2)

伊豆津宏二(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科 科長)

2018.05.24

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2018年5月分(Vol. 2)は、伊豆津宏二氏が担当します。

CHOP versus GEM-P in previously untreated patients with peripheral T-cell lymphoma (CHEMO-T): a phase 2, multicentre, randomised, open-label trial.

Lancet Haematol. 5(5):e190-e200

Gleeson M, Peckitt C, To YM, Edwards L, Oates J, Wotherspoon A, Attygalle AD, Zerizer I, Sharma B, Chua S, Begum R, Chau I, Johnson P, Ardeshna KM, Hawkes EA, Macheta MP, Collins GP, Radford J, Forbes A, Hart A, Montoto S, McKay P, Benstead K, Morley N, Kalakonda N, Hasan Y, Turner D, Cunningham D

ここに注目!

CHOP療法は、悪性リンパ腫のさまざまな病型に対する初回治療として最も多く用いられているレジメンであるが、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)でのCHOP療法の奏効割合や無増悪生存期間は十分とはいえない。PTCLでP糖蛋白(MDR-1)が高発現していることが、原因の一つと考えられており、節外性NK/T細胞リンパ腫のように、P糖蛋白によって排出されない抗腫瘍薬による多剤併用化学療法で予後が改善されるか、興味がもたれるところである。GEM-P療法(ゲムシタビン、シスプラチン)は、P糖蛋白によって排出されない抗腫瘍薬により構成され、再発・難治性PTCLに対して一定の効果が示されている。本試験は、未治療PTCLを対象としてGEM-P療法とCHOP療法の完全奏効(CR)割合を比較するランダム化第Ⅱ相試験であったが、予定された中間解析前に発表された主要評価項目であるCR割合において、GEM-P群がCHOP群に勝る可能性が低いとして早期中止となった。この結果から、現時点ではPTCLにおいてもCHOP療法を選択すべきという結論になる。しかし、無増悪生存期間については両療法に目立った違いは見られていない。

Genetics and Pathogenesis of Diffuse Large B-Cell Lymphoma.

N Engl J Med. 378(15):1396-1407

Schmitz R, Wright GW, Huang DW, Johnson CA, Phelan JD, Wang JQ, Roulland S, Kasbekar M, Young RM, Shaffer AL, Hodson DJ, Xiao W, Yu X, Yang Y, Zhao H, Xu W, Liu X, Zhou B, Du W, Chan WC, Jaffe ES, Gascoyne RD, Connors JM, Campo E, Lopez-Guillermo A, Rosenwald A, Ott G, Delabie J, Rimsza LM, Tay Kuang Wei K, Zelenetz AD, Leonard JP, Bartlett NL, Tran B, Shetty J, Zhao Y, Soppet DR, Pittaluga S, Wilson WH, Staudt LM

ここに注目!

本研究では、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の遺伝学的サブタイプ分類が試みられ、MCD(MYD88 L265PとCD79B変異)、BN2(BCL6転座とNOTCH2変異)、N1(NOTCH1変異)、EZB(EZH2変異とBCL2転座)の4つの遺伝学的サブタイプが同定された。それぞれの遺伝子発現シグネチャーや標準的化学療法での予後は異なる。DLBCLでは遺伝子発現プロファイリングによる細胞起源(cell-of-origin)分類毎の新規治療薬開発が行われており、中でもABC型DLBCLの初回治療におけるibrutinibやlenalidomideの役割を評価する第Ⅲ相試験の結果が待たれているところである。今回の遺伝子異常に基づく遺伝学的サブタイプ分類は、細胞起源分類をさらに詳細に進めたものともいえ、分子標的薬の治療対象をより精密に選択する際に有用である可能性がある。

Major Histocompatibility Complex Class II and Programmed Death Ligand 1 Expression Predict Outcome After Programmed Death 1 Blockade in Classic Hodgkin Lymphoma.

J Clin Oncol. 36(10):942-950

Roemer MGM, Redd RA, Cader FZ, Pak CJ, Abdelrahman S, Ouyang J, Sasse S, Younes A, Fanale M, Santoro A, Zinzani PL, Timmerman J, Collins GP, Ramchandren R, Cohen JB, De Boer JP, Kuruvilla J, Savage KJ, Trneny M, Ansell S, Kato K, Farsaci B, Sumbul A, Armand P, Neuberg DS, Pinkus GS, Ligon AH, Rodig SJ, Shipp MA

ここに注目!

再発・難治性ホジキンリンパ腫(HL)に対する抗PD-1抗体nivolumabのpivotal試験(CheckMate 205)に登録された患者の腫瘍検体で、PD-L1遺伝子異常、PD-L1発現、抗原提示に関わる分子(MHC class Ⅰ、β2-microglobulin、MHC class Ⅱ)の発現と、治療効果との関連を調べた研究。殺細胞性の抗腫瘍薬による多剤併用化学療法を受けた患者では、PD-L1遺伝子異常やPD-L1高発現は予後不良と関連していることが報告されているが、nivolumab治療を受けた患者では逆にPD-L1発現の程度が高いほど無増悪生存期間(PFS)が長かった。また、MHC class Ⅰやβ2-microglobulinの発現とPFSの関連はなかったが、自家移植後12カ月以上経過し、免疫系が再構築されている患者ではclass Ⅱの発現とPFSの長さが関連していた。固形腫瘍に対する抗PD-1抗体の作用機序ではMHC class Ⅰの役割が重要であると考えられているが、HLではclass Ⅱを介した別の機序が重要である可能性が示唆される、興味深いデータである。