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この論文に注目!Focus On

2023年11月の注目論文(Vol. 1)

宮﨑泰司(長崎大学 原爆後障害医療研究所 所長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2023年11月分(Vol. 1)は、宮﨑泰司氏が担当します。

ここに注目!

低リスク骨髄異形成症候群(LR-MDS)では血小板減少は予後不良と関連している。トロンボポエチン受容体作動薬であるeltrombopag (ETP)の、LR-MDSにおける血小板減少に対する安全性と有効性を検討するために、重症の血小板減少(3万/μL未満)を伴うLR-MDS(IPSSで低リスクあるいは中間−1リスク)を対象として、単盲検、プラセボ対照の無作為化第Ⅱ相試験が実施された。主要評価項目は血小板反応の期間、長期の安全性と忍容性であった。ETP群に112例、コントロール群に57例が割り付けられETP 50mg/日から最高用量300mg/日までが投与された。その結果、観察期間中央値25週時点で、血小板反応はETP群42.3%(47/111例)、コントロール群11.1%(6/54例)に見られた(P<0.001)。臨床的に有意な出血(WHO出血スコア2以上)はETP群で有意に少なかった(発生率比0.54、P=0.002)。Grade 1/2有害事象に差は無かったもののGrade 3/4有害事象はETP群に有意に多かった。AMLへの進展、全生存に差は無かった。こうした結果より、ETPは強い血小板減少を伴うLR-MDSに対して有効で比較的安全であると考えられた。ETPは他の血液疾患に対しても安全に投与されており、本試験結果からはLR-MDSで血小板を増加させる新たな治療となる可能性も考えられる。今後の開発動向が注目される。