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この論文に注目!Focus On

2023年11月の注目論文(Vol. 2)

木崎昌弘(埼玉医科大学 名誉教授/よみうりランド慶友病院 副院長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2023年11月分(Vol. 2)は、木崎昌弘氏が担当します。

Elranatamab in relapsed or refractory multiple myeloma: the MagnetisMM-1 phase 1 trial

Nat Med. 2023 Oct;29(10):2570-2576. doi: 10.1038/s41591-023-02589-w. Epub 2023 Oct 2.

Nizar J Bahlis, Caitlin L Costello, Noopur S Raje, Moshe Y Levy, Bhagirathbhai Dholaria, Melhem Solh, Michael H Tomasson, Michael A Damore, Sibo Jiang, Cynthia Basu, Athanasia Skoura, Edward M Chan, Suzanne Trudel, Andrzej Jakubowiak, Cristina Gasparetto, Michael P Chu, Andrew Dalovisio, Michael Sebag, Alexander M Lesokhin.

ここに注目!

再発・難治多発性骨髄腫を対象としたヒト化抗BCMA/CD3二重特異性抗体製剤(エルラナタマブ)の国際共同第Ⅰ相試験(MagnetisMM-1試験)の結果である。MagnetisMM-1試験には、中央値で5剤の薬剤投与歴があり、90.9%はプロテアソーム阻害薬、免疫調節薬および抗CD38モノクローナル抗体の3クラスに耐性を示し、29.1%には高リスク染色体異常を有するという極めて治療抵抗性の患者がエントリーされた。主要評価項目であるORRは63.6%(CR 38.2%)であり、反応した患者のDOR中央値は17.1カ月であった。PFS中央値は11.8カ月、OS中央値は21.2カ月であった。また、本剤を低用量から開始する2段階プライミング投与により、サイトカイン放出症候群(CRS)および免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)の発現割合および重症度の低減が認められ、良好な安全性プロファイルが示された。日常診療では3剤耐性は当たり前の状況であるが、エルラナタナブのBCMAおよびCD3に対する結合親和性は、T細胞を介した強力な抗骨髄腫活性を誘導するように設計されているとのことであり、このBiTE抗体は骨髄腫治療の新たな扉を開くと思われる。極めて重要な論文である。