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この論文に注目!Focus On

2022年9月の注目論文(Vol. 2)

木崎昌弘(埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2022年9月分(Vol. 2)は、木崎昌弘氏が担当します。

Teclistamab in Relapsed or Refractory Multiple Myeloma

N Engl J Med. 2022 Jun 5. doi: 10.1056/NEJMoa2203478. Online ahead of print.

Moreau P, Garfall AL, van de Donk NWCJ, Nahi H, San-Miguel JF, Oriol A, Nooka AK, Martin T, Rosinol L, Chari A, Karlin L, Benboubker L, Mateos MV, Bahlis N, Popat R, Besemer B, Martínez-López J, Sidana S, Delforge M, Pei L, Trancucci D, Verona R, Girgis S, Lin SXW, Olyslager Y, Jaffe M, Uhlar C, Stephenson T, Van Rampelbergh R, Banerjee A, Goldberg JD, Kobos R, Krishnan A, Usmani SZ.

ここに注目!

多発性骨髄腫に対する治療薬の開発は目覚ましいものがあるが、現在の多発性骨髄腫の治療上の最も大きな問題は、プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬(IMiDs)、抗CD38抗体の3クラス抵抗性症例に対する治療である。このような3クラス抵抗性症例に対してはB細胞成熟抗原(BCMA)を標的にした治療法が現実味を帯びているが、BCMAに対するCAR-T細胞療法は既に保険承認され、抗体薬物複合体Belantamab Mafodotinの治験も進んでいる。本論文は、BCMAとCD3を標的にした二重特異性抗体Teclistamabによる第Ⅰ/Ⅱ相試験の結果に関する重要な報告である。本試験では少なくとも3クラスによる治療に抵抗性を示す165例が登録され、Teclistamabが週1回皮下投与された。主要評価項目は全奏効であった。追跡期間14.1カ月における全奏効は104/165例(63.0%)であり最良部分奏効以上は58.8%に認められた。44例(26.7%)でMRD陰性となり、奏効期間中央値は18.4カ月、無増悪生存期間中央値は11.3カ月と、患者背景を考えると素晴らしい成績であった。気になる有害事象は、サイトカイン放出症候群、血球減少、神経毒性などが主なものであるが、特に感染症の頻度が高く注意すべきとされている。Teclistamabは患者背景を考慮すれば、深い奏効と持続する有効性を得ることが可能であり、今後が期待される薬剤と考えられる。多発性骨髄腫治療の新しい時代を感じさせる注目すべき論文である。