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この論文に注目!Focus On

2022年9月の注目論文(Vol. 1)

坂田(柳元)麻実子(筑波大学 医学医療系 血液内科 教授)

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血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2022年9月分(Vol. 1)は、坂田(柳元)麻実子氏が担当します。

Detection of early seeding of Richter transformation in chronic lymphocytic leukemia

Nat Med. 2022 Aug;28(8):1662-1671. doi: 10.1038/s41591-022-01927-8. Epub 2022 Aug 11.

Nadeu F, et al.

ここに注目!

慢性リンパ性白血病(CLL)からRichter症候群へのトランスフォーメーション(RT)のメカニズムに関する研究。19症例について、最長19年の経過の中で経時的にサンプリングされた54サンプルについて全ゲノムシーケンス解析、エピゲノム解析、シングルセルDNA/RNA解析、さらには機能解析を組み合わせた統合的な解析により、RTに伴う変化の全体像を明らかにした。一塩基置換の変異シグネチャーが新たに発見され、SBS-RTと名付けられた。SBS-RTはベンダムスチンあるいはクロラムブシルによる治療後のサンプルにみられる傾向があった。長期経過後のRT症例であっても、診断時からRTクローンが微量ながら観察された。酸化的リン酸化(OXPHOS)に関わる遺伝子発現が高く、B細胞受容体シグナルは低下しているというパターンがみられ、機能解析においてもOXPHOS阻害によりRT細胞の増殖は阻害された。本研究により、CLL診断時から観察される微量クローンからRTに至るクローン進化の過程とメカニズムが明らかになるとともに、OXPHOSはRTクローンの増加を阻害する治療標的となり得ることを示している。