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この論文に注目!Focus On

2022年7月の注目論文(Vol. 1)

柴山浩彦(国立病院機構 大阪医療センター 血液内科 科長)

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血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2022年7月分(Vol. 1)は、柴山浩彦氏が担当します。

Minimal Residual Disease After Autologous Stem-Cell Transplant for Patients With Myeloma: Prognostic Significance and the Impact of Lenalidomide Maintenance and Molecular Risk

J Clin Oncol. 2022 Apr 4:JCO2102228. doi: 10.1200/JCO.21.02228. Online ahead of print.

de Tute RM, Pawlyn C, Cairns DA, Davies FE, Menzies T, Rawstron A, Jones JR, Hockaday A, Henderson R, Cook G, Drayson MT, Jenner MW, Kaiser MF, Gregory WM, Morgan GJ, Jackson GH, Owen RG.

ここに注目!

微小残存病変(MRD)陰性を獲得し維持することは、多発性骨髄腫(MM)患者の生命予後を有意に改善する予後予測因子となることが、種々の臨床試験で示されている。本研究では、英国で実施されたMyeloma XI試験の症例を用いて、自家造血幹細胞移植(ASCT)後3カ月(ASCT+3)と9カ月(ASCT+9)のMRDの状態と、レナリドミド(Len)維持療法(ASCT後3カ月から開始)の有無、ハイリスク染色体異常の有無、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)との関係を解析している。ASCT+3およびASCT+9でのMRD陰性例は陽性例と比較し、有意にPFSおよびOSが延長した。また、ASCT+3から+9でMRDが陰転化した患者のPFSはMRD陰性のままの患者と変わらず良好であったが、MRDが陽転化した患者のPFSはMRD陽性のままの患者と変わらず不良であった。Len維持療法によるMRD陰転化は30%(vs Obs.17%)でみられた。また、ハイリスク染色体異常を有する患者はMRDの状態に関わらず、PFSおよびOSは不良であった。以上より、ハイリスク染色体異常を有さない患者においてASCT+9のMRD陰性状態が、PFSおよびOSの強力な予後予測因子となることが示されている。