血液専門医と医療関係者のための情報サイト「ヘマトパセオ」

この論文に注目!Focus On

2022年12月の注目論文

宮﨑泰司(長崎大学 原爆後障害医療研究所 所長)

会員限定コンテンツになりました。すべてお読みいただくには会員登録をお願いします。

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2022年12月分は、宮﨑泰司氏が担当します。

ここに注目!

中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は難治性で、標準治療はまだ確立されていない。18-60歳のPCNSLを対象に大量メトトレキサート療法後の治療として自家造血幹細胞移植を併用した大量化学療法(ASCT)群と全脳照射(WBRT)40Gy群に70例ずつを割り付け、両者の有効性と安全性を検討した無作為化第Ⅱ相試験(PRECIS study)について、今回、長期予後(観察期間中央値98カ月)が発表された。割り付けられた症例のうち両群とも66例が治療を受け、ASCTは44例、WBRTは53例に施行された。これらの例(ASCT群44例、WBRT群53例)では、8年の無イベント生存率はASCT群、WBRT群でそれぞれ67%、33%と有意にASCT群が優れ(P=0.03)、再発リスクは同群で有意に低かった(ハザード比0.13、P<0.001)。治療を受けた66例ずつの8年全生存率(ASCT群54%とWBRT群58%)には差がなかったが、中枢神経毒性としてバランスおよび神経認知機能(特に実行機能)は有意にWBRT群で低下していた。以上より、PCNSLに対する寛解導入療法後治療にはASCT併用大量化学療法を優先し、40Gy全脳照射は第一選択の治療としては避けるべきであると考えられた。