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特集造血幹細胞移植をめぐる最近の話題移植後の患者の生活をいかに改善させるか(3)わが国の造血幹細胞移植数は、自家と同種を合わせ年間約5,500件。造血幹細胞ソースで臍帯血が大きく増え、2010年頃よりHLA半合致移植(ハプロ移植)も著しく増加してきた。移植医療の進歩に伴い、移植後の生存率は年々向上している一方で、移植後の晩期合併症対策やQOLの維持など、新たな課題もうまれている。ここでは、移植後シクロホスファミドを用いたHLA半合致移植の可能性、慢性GVHDの最新の病態研究と治療法、移植患者の長期フォローアップの重要性と課題、小児科での骨髄非破壊的移植とHLA半合致移植の意義について、各分野の専門家に解説していただいた。(責任編集 前田嘉信)

移植後の長期フォローアップの重要性と課題
LTFUを効率的に運用するための“3つの肝”

黒澤彩子(国立がん研究センター中央病院 造血幹細胞移植科)

近年、造血幹細胞移植後の急性期の予後が改善してきたことを背景に、移植後晩期のケアやQOLの支持が課題となっている。移植後5年無病生存患者の死亡リスクは、一般人口と比較して高く、慢性GVHDのほか、臓器障害や内分泌疾患の罹患率も高い。定期的に移植後の状態を評価し、早期に原病の変化や合併症を把握するため、造血幹細胞移植後長期フォローアップ専門外来(LTFU)を設置する施設が増加しているが、まだ手探り状態の運用といえる。LTFUの役割は、移植後晩期合併症の管理のみならず、身体面、心理面、社会面などの多角的な支持である。本稿では、わが国の移植後長期フォローアップの現状を踏まえ、LTFUの効率的な運用に向けた提言をしたい。