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2020年3月の注目論文(Vol. 2)

宮﨑泰司(長崎大学 原爆後障害医療研究所 所長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2020年3月分(Vol. 2)は、宮﨑泰司氏が担当します。

Microbiota as Predictor of Mortality in Allogeneic Hematopoietic-Cell Transplantation.

N Engl J Med. 382(9):822-834

Peled JU, Gomes ALC, Devlin SM, Littmann ER, Taur Y, Sung AD, Weber D, Hashimoto D, Slingerland AE, Slingerland JB, Maloy M, Clurman AG, Stein-Thoeringer CK, Markey KA, Docampo MD, Burgos da Silva M, Khan N, Gessner A, Messina JA, Romero K, Lew MV, Bush A, Bohannon L, Brereton DG, Fontana E, Amoretti LA, Wright RJ, Armijo GK, Shono Y, Sanchez-Escamilla M, Castillo Flores N, Alarcon Tomas A, Lin RJ, Yáñez San Segundo L, Shah GL, Cho C, Scordo M, Politikos I, Hayasaka K, Hasegawa Y, Gyurkocza B, Ponce DM, Barker JN, Perales MA, Giralt SA, Jenq RR, Teshima T, Chao NJ, Holler E, Xavier JB, Pamer EG, van den Brink MRM

ここに注目!

本研究では、以前より報告のある腸内細菌叢と同種造血幹細胞移植後の臨床成績との関連が一般化できるのかについて詳細に検討されている。米国、ドイツ、日本の4移植センターで、同種造血幹細胞移植を受ける1,362名の患者から8,767の便検体を採取し、16SリボソームRNAシーケンスによって腸内細菌叢を同定して、その結果と種々の臨床成績との関連が検討されている。移植患者の腸内細菌叢では単一の細菌群が優勢になって多様性が失われており、腸内細菌叢の多様性は移植センターの違いにかかわらず低い移植関連死と有意に関連しており、GVHDの寄与も考えられた。腸内細菌叢の乱れは移植前からみられ、多様性が失われていることは移植後予後不良を示唆していた。同種移植成績と腸内細菌叢の関連は、地理的および移植センターの違いを超えて観察されており、また腸はGVHDの重要な標的臓器でもあるため、大変興味深い報告である。

Impact of NPM1/FLT3-ITD genotypes defined by the 2017 European LeukemiaNet in patients with acute myeloid leukemia.

Blood. 135(5):371-380

Döhner K, Thiede C, Jahn N, Panina E, Gambietz A, Larson RA, Prior TW, Marcucci G, Jones D, Krauter J, Heuser M, Voso MT, Ottone T, Nomdedeu JF, Mandrekar SJ, Klisovic RB, Wei AH, Sierra J, Sanz MA, Brandwein JM, de Witte T, Jansen JH, Niederwieser D, Appelbaum FR, Medeiros BC, Tallman MS, Schlenk RF, Ganser A, Serve H, Ehninger G, Amadori S, Gathmann I, Benner A, Pallaud C, Stone RM, Döhner H, Bloomfield CD

ここに注目!

AML患者ではFLT3遺伝子の内部縦列重複(ITD)の存在が予後不良と関連するが、AMLの予後予測モデルである2017 ELNでは、FLT3-ITDのアレル比(0.5以上と未満)およびNPM1遺伝子変異の有無で4群に分けられる。その意義をFLT3阻害薬であるmidostaurin(MID)の有効性を検証したRATIFY試験(患者年齢18-60歳)の結果を用いて後方視的に解析している。その結果、FLT3-ITD/NPM1の状況にかかわらず初診時白血球数が寛解到達に関連する因子であり、MIDの追加は結果に影響しなかった。しかし生存割合はELN予後群(良好、中間、不良)で有意に異なっており、MID治療、同種移植実施、ELN予後良好群、低い白血球数が予後良好と関連する因子であったというもので、ELNリスク群にかかわらずMIDの有効性が確認されている。

本論文のLast authorであるClara Bloomfield博士はAMLに対する大量シタラビン療法の有用性を確立するなど白血病研究をリードしてきた世界的に著名な血液学者であるが、先日(2020年3月1日)急逝された。日本の血液学を温かく支援していただいた方のおひとりである。心よりご冥福をお祈り申し上げる。

Utility of clinical comprehensive genomic characterisation for diagnostic categorisation in patients presenting with hypocellular bone marrow failure syndromes.

Haematologica. 2020 Feb 13. pii: haematol.2019.237693. doi: 10.3324/haematol.2019.237693.

Blombery P, Fox L, Ryland GL, Thompson ER, Lickiss J, McBean M, Yerneni S, Hughes D, Greenway A, Mechinaud F, Wood EM, Lieschke GJ, Szer J, Barbaro P, Roy J, Wight J, Lynch E, Martyn M, Gaff C, Ritchie D

ここに注目!

骨髄低形成と関連した造血不全は臨床的には異なる疾患群からなっており、先天性から後天性疾患まで幅広く鑑別する必要がある。適切な臨床的マネージメント選択には正確な診断が必要だが、ゲノム変異情報がこれらの診断に役立つかについて検討した研究である。臨床的に骨髄不全症候群と診断された115名の患者(年齢中央値24歳:3カ月-81歳)に対して診断時にターゲットシーケンスを含むゲノム解析と全エクソン解析を実施した。ゲノム変異は、先天性骨髄不全、後天性骨髄不全、臨床的に分類不能な骨髄不全においてそれぞれ52%(12/23例)、53%(25/47例)、56%(25/45例)で同定され、これに基づいて全体で26%(30/115例)の診断が変更となった。これらは後天性、分類不能とされていた症例であり、TERTFANCRPS7SAMD9遺伝子変異が含まれていた。これらの結果より、骨髄不全症候群診断にゲノム変異解析が重要であり、臨床的に実施される必要があると考えられる。