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2020年1月の注目論文

坂田(柳元)麻実子(筑波大学 医学医療系 血液内科 准教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2020年1月分は、坂田(柳元)麻実子氏が担当します。

Integrated drug profiling and CRISPR screening identify essential pathways for CAR T cell cytotoxicity.

Blood. 2019 Dec 12. pii: blood.2019002121. doi: 10.1182/blood.2019002121. [Epub ahead of print]

Dufva O, Koski J, Maliniemi P, Ianevski A, Klievink J, Leitner J, Pölönen P, Hohtari H, Saeed K, Hannunen T, Ellonen P, Steinberger P, Kankainen M, Aittokallio T, Keränen MAI, Korhonen M, Mustjoki S

ここに注目!

CAR-T細胞療法は再発・難治性B細胞腫瘍に対して一定の有効性が示されているが、治療開始時から耐性であったり、治療を続けるうちに耐性を獲得してしまう場合がある。著者らは、低分子化合物およびCRISPR-Cas9を用いたゲノムワイドなスクリーニングを組み合わせることにより、CAR-T細胞療法の有効性を高める方法を探索した。

SMAC類似物質(アポトーシスを活性化する)にはCAR-T細胞の細胞障害活性を高める作用があることが明らかになった。さらには、標的であるB細胞腫瘍側で細胞死シグナルに関わるFADDおよびTNFRSF10B(TRAIL-R2)を阻害することにより、CAR-T細胞の細胞障害活性が抑制された。CAR-T細胞療法においては、細胞死シグナル分子の発現量は治療効果を予測する指標として有用な可能性があり、また、細胞死シグナルを活性化する薬剤を併用することで治療効果を高められると期待される。

Integrative analysis of spontaneous CLL regression highlights genetic and microenvironmental interdependency in CLL.

Blood. 135(6):411-428

Kwok M, Oldreive C, Rawstron AC, Goel A, Papatzikas G, Jones RE, Drennan S, Agathanggelou A, Sharma-Oates A, Evans P, Smith E, Dalal S, Mao J, Hollows R, Gordon N, Hamada M, Davies NJ, Parry H, Beggs AD, Munir T, Moreton P, Paneesha S, Pratt G, Taylor AMR, Forconi F, Baird DM, Cazier JB, Moss P, Hillmen P, Stankovic T

ここに注目!

慢性リンパ性白血病(CLL)は、まれに無治療のまま自然退縮することが知られるが、その仕組みは明らかではなかった。著者らは、CLL 1,425例のうち自然退縮した20例(1.4%)について、様々な生物学的な特徴を解析した。いずれの症例でもIGHV変異がみられ、一時的には増殖期にあったことを示すテロメア長の短縮がみられる一方、増殖の指標であるKi-67やMyc等の発現は抑制され、B細胞受容体シグナル活性は低下していた。興味深いことに、CLLの初期のゲノム異常と考えられている13q14欠失は11例(61%)にみられ、さらには一部の症例ではCLLのドライバー変異として知られるHIST1H1B変異(1例)およびTP53変異(3例)がみられた。

また、疲弊したT細胞の指標であるPD-1等の発現は低下し、T細胞の増殖は活性化していた。経過中に再発した1例では、BCRシグナルが活性化し、新たなゲノム異常を獲得していた。これらの結果から、CLLの一部の症例においては、増殖期から静止期へ移行し、周囲の免疫環境との相互作用により自然退縮に至ると考えられた。

Asciminib in Chronic Myeloid Leukemia after ABL Kinase Inhibitor Failure.

N Engl J Med. 381(24):2315-2326

Hughes TP, Mauro MJ, Cortes JE, Minami H, Rea D, DeAngelo DJ, Breccia M, Goh YT, Talpaz M, Hochhaus A, le Coutre P, Ottmann O, Heinrich MC, Steegmann JL, Deininger MWN, Janssen JJWM, Mahon FX, Minami Y, Yeung D, Ross DM, Tallman MS, Park JH, Druker BJ, Hynds D, Duan Y, Meille C, Hourcade-Potelleret F, Vanasse KG, Lang F, Kim DW

ここに注目!

Asciminibは従来のATP結合部位に結合するABLキナーゼ阻害剤とは異なる作用機序をもつ新規のBCR-ABL阻害剤である。BCR-ABLタンパク質のアロステリック阻害剤として働き、ABL1のミリストイル部位に結合することで、BCR-ABLを不活性型に保つ。従来型ABLキナーゼ阻害剤のうち2種類以上に耐性あるいは不耐容であった慢性骨髄性白血病(CML)の慢性期(CP)141例、移行期(AP)9例について、最大耐容量および推奨投与量を決めるために、用量漸増phaseⅠ試験が行なわれた。本試験の投与量では最大耐容量には到達しなかった。CML CPでは、T315変異のない場合には12カ月時点で48%はMajor molecular response(MMR)に到達し、ポナチニブに耐性あるいは不耐容では8/14例(57%)、T315I変異のある5/18例(28%)についてもMMRを達成した。一方、CML APでは、MMRを達成したのは1/9例(11%)のみであった。用量制限毒性は、無症候性のリパーゼ値上昇(35例)および膵炎(5例)であり、このほか倦怠感、頭痛、関節痛、高血圧、血小板減少がみられた。Asciminibは従来型ABLキナーゼ阻害剤に耐性あるいは不耐容の症例に有用であると期待される。