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2020年4月の注目論文(Vol. 1)

木崎昌弘(埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2020年4月分(Vol. 1)は、木崎昌弘氏が担当します。

Use of CAR-Transduced Natural Killer Cells in CD19-Positive Lymphoid Tumors.

N Engl J Med. 382(6):545-53

Liu E, Marin D, Banerjee P, Macapinlac HA, Thompson P, Basar R, Nassif Kerbauy L, Overman B, Thall P, Kaplan M, Nandivada V, Kaur I, Nunez Cortes A, Cao K, Daher M, Hosing C, Cohen EN, Kebriaei P, Mehta R, Neelapu S, Nieto Y, Wang M, Wierda W, Keating M, Champlin R, Shpall EJ, Rezvani K

ここに注目!

新しいがん治療としてCAR-T細胞療法が注目されているが、CRSや神経毒性などの重篤な有害事象が報告されている。今回、MDアンダーソンから報告された、B細胞性腫瘍に対するCD19 CAR-NK細胞療法は、CAR-T細胞療法の欠点を補う画期的な治療法である。臍帯血から分離したNK細胞を特定のがんターゲットに対するCARを発現するように改変し、さらにIL-15で体内のCAR-NK細胞の増殖や生存を促進するように考えられている。このCD19に対するCAR-NK細胞療法を11例の再発・難治B細胞性腫瘍に投与した結果、8例が治療に反応し、CRSや神経毒性はみられなかった。さらに、CAR-NK細胞は12カ月にわたって生存していた。CAR-T細胞と異なり、NK細胞は健常なドナーから採取されるので、事前に作製し緊急時にも使用可能であり、外来でも治療可能とのことである。この技術は武田薬品にライセンス供与されたとのことであり、今後が楽しみである。

Transcriptional profiling of circulating tumor cells in multiple myeloma: a new model to understand disease dissemination.

Leukemia. 34(2):589-603

Garcés JJ, Simicek M, Vicari M, Brozova L, Burgos L, Bezdekova R, Alignani D, Calasanz MJ, Growkova K, Goicoechea I, Agirre X, Pour L, Prosper F, Rios R, Martinez-Lopez J, Millacoy P, Palomera L, Del Orbe R, Perez-Montaña A, Garate S, Blanco L, Lasa M, Maiso P, Flores-Montero J, Sanoja-Flores L, Chyra Z, Vdovin A, Sevcikova T, Jelinek T, Botta C, El Omri H, Keats J, Orfao A, Hajek R, San-Miguel JF, Paiva B

ここに注目!

骨髄腫細胞の一部が末梢血中に流れることが知られているが、その意義や機序については明らかでない。この論文では、32例の患者骨髄の骨髄腫細胞と末梢血の循環腫瘍細胞(CTC)における遺伝子発現について次世代シーケンサーを用いて比較検討した。その結果、両者の遺伝子発現パターンは似ていたが、発現の異なる55遺伝子が同定された。CTCでは炎症やEMTに関係する遺伝子発現が特徴的で、特に幹細胞マーカーであるCD44が過剰発現していた。また、骨髄腫細胞のCD44をノックダウンするとmigrationが阻害された。これらの結果より、CTCは幹細胞としての特徴を有し、骨髄から末梢血への流出は骨髄ニッチの低酸素環境や炎症性の骨髄微小環境が関与することが推測された。さらに55遺伝子中の29遺伝子は予後に関係し、CENPFLGALS1過剰発現は予後不良であった。将来的にはCTCを標的とする治療により病勢進展を抑制できる可能性が示された。骨髄腫のbiologyに関する興味深い論文である。

Molecular patterns of response and treatment failure after frontline venetoclax combinations in older patients with AML.

Blood. 135(11):791-803

DiNardo CD, Tiong IS, Quaglieri A, MacRaild S, Loghavi S, Brown FC, Thijssen R, Pomilio G, Ivey A, Salmon JM, Glytsou C, Fleming SA, Zhang Q, Ma H, Patel KP, Kornblau SM, Xu Z, Chua CC, Chen X, Blombery P, Flensburg C, Cummings N, Aifantis I, Kantarjian H, Huang DCS, Roberts AW, Majewski IJ, Konopleva M, Wei AH

ここに注目!

BCL-2阻害薬ベネトクラクスとメチル化阻害薬や低用量Ara-Cの併用による治療は、高齢者AMLの重要な治療選択である。MDアンダーソンのグループは、これらの治療を行なった81例のAMLについて継時的なsingle cellレベルでのゲノム解析を行ない、治療成績との相関について検討した。ベネトクラクスベースの治療が奏効し、CR/CRiを12カ月以上持続し得た症例では、NPM1遺伝子変異、IDH2遺伝子変異が認められ、2年生存率は70%以上であった。したがって、ベネトクラクスを用いた治療はNPM1IDH2変異を有するAMLに推奨される。しかし、ベネトクラクスベースの治療に抵抗性を示した症例では、FLT3RASTP53遺伝子異常が認められた。さらに、治療初期からポリクローナルな変化を示し、クローン内不均一を示す症例は治療効果に乏しいために、治療法の変更が必要である。白血病のサブクローンはダーウィンの進化論のように進展していくために、本論文では継時的なsingle cellレベルでのゲノム解析は、適切な治療選択に重要であるとしている。