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2019年9月の注目論文(Vol. 2)

坂田麻実子(筑波大学 医学医療系 血液内科 准教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2019年9月分(Vol. 2)は、坂田麻実子氏が担当します。

Progression of Disease Within 24 Months in Follicular Lymphoma Is Associated With Reduced Intratumoral Immune Infiltration.

J Clin Oncol. 2019 Aug 28. [Epub ahead of print]

Tobin JWD, Keane C, Gunawardana J, Mollee P, Birch S, Hoang T, Lee J, Li L, Huang L, Murigneux V, Fink JL, Matigian N, Vari F, Francis S, Kridel R, Weigert O, Haebe S, Jurinovic V, Klapper W, Steidl C, Sehn LH, Law SC, Wykes MN, Gandhi MK

ここに注目!

濾胞性リンパ腫(FL)の予後不良を予測する指標とされる「24カ月以内の進行(POD24)」と腫瘍組織内の免疫細胞浸潤との関連についての研究。免疫に関わる遺伝子(免疫エフェクター分子、免疫チェックポイント、マクロファージ関連分子)の発現をdigital gene expression (DGE)により調べた。早期あるいは進行期FL(n=132, discovery cohort)とR-CVP療法(n=138)あるいはR-CHOP療法(n=45)を行なった進行期FL(validation cohort)について、POD24がみられた群と5年以上再発がない群を比較した。PD-L2低発現は最も予後不良と相関していた。PD-L2低発現の場合を低免疫浸潤群、PD-L2高発現の場合を高免疫浸潤群としたところ、高免疫浸潤群ではマクロファージやT細胞の浸潤がみられた。低免疫浸潤群ではPOD24の比率が高く、validationコホートでも同様の結果が示された。PD-L2発現はPOD24の予測に有用なツールと考えられた。

Efficacy of Tyrosine Kinase Inhibitors in Ph-like Acute Lymphoblastic Leukemia harboring ABL-class Rearrangements.

Blood. 2019 Aug 21. [Epub ahead of print]

Tanasi I, Ba I, Sirvent N, Braun T, Cuccuini W, Ballerini P, Duployez N, Tanguy-Schmidt A, Tamburini J, Maury S, Doré E, Himberlin C, Duclos C, Chevallier P, Rousselot P, Bonifacio M, Cavé H, Baruchel A, Dombret H, Soulier J, Landman-Parker J, Boissel N, Clappier E

ここに注目!

Ph-like急性リンパ性白血病(Ph-like ALL)とは、遺伝子発現プロファイル(GEP)はPh-ALLに類似するがBCR-ABL1転座そのものはみられない疾患群である。予後不良とされ、ABL阻害剤の有効性が示唆されるが、現状ではPh-like ALLを簡便に診断するのは難しい。本研究では、2つの臨床試験に登録された患者において、マルチプレックス標的解析あるいはRNAシーケンス解析を用いたところ、24症例にBCR-ABL1以外のABLあるいはABL類似遺伝子を含む融合遺伝子(NUP214-ABL1 [n=6], ETV6-ABL1 [n=3], EBF1-PDGFRB [n=6]など)を同定した。これらの融合遺伝子は24例中19例では初発時に同定され、初回治療あるいは地固め療法、サルベージ療法等のタイミングからTKIを投与された。5例は再発時に同定された。選択されたTKIの種類は、14例がイマチニブ、9例がダサチニブ、1例がポナチニブであった。初発時に同定された19例中7例はprimary refractoryであったが、いずれもTKIにより完全寛解(CR)となった。初発時に同定された群の3年EFSは55%、OSは77%とPh-like ALLとしては良好な成績であった。再発時に同定された5例についても、TKI投与によりCRを達成した。本研究により、ABL類似の転座により迅速にPh-like ALLを同定し、TKIを含む治療を行なうことで、予後を改善する可能性がある。