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この論文に注目!Focus on

2018年12月の注目論文

木崎昌弘(埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 教授)

2018.12.20

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2018年12月分は、木崎昌弘氏が担当します。

Elotuzumab plus Pomalidomide and Dexamethasone for Multiple Myeloma.

N Engl J Med. 379(19):1811-1822

Dimopoulos MA, Dytfeld D, Grosicki S, Moreau P, Takezako N, Hori M, Leleu X, LeBlanc R, Suzuki K, Raab MS, Richardson PG, Popa McKiver M, Jou YM, Shelat SG, Robbins M, Rafferty B, San-Miguel J

ここに注目!

ボルテゾミブあるいはレナリドミド2剤に抵抗性となった再発・難治多発性骨髄腫に対する治療をどうするかは臨床的に解決しなくてはならない重要な課題である。これら2剤に抵抗性となった症例には、ポマリドミド/少量デキサメタゾン(Pd)療法の効果が知られているが(MM-003試験)、本論文はエロツズマブの上乗せ効果を検討した第Ⅲ相試験(ELOQUENT-3試験)である。主要評価項目のPFS中央値はエロツズマブ/Pd群10.3カ月、Pd群4.7カ月(HR: 0.54)でエロツズマブの上乗せ効果が証明された。サードライン以降の2剤耐性症例に対しては実績あるPd療法にエロツズマブ併用療法は有用であり、安全性にも優れているとして注目される。

Characterization and targeting of malignant stem cells in patients with advanced myelodysplastic syndromes.

Nat Commun. 9(1):3694

Stevens BM, Khan N, D'Alessandro A, Nemkov T, Winters A, Jones CL, Zhang W, Pollyea DA, Jordan CT

ここに注目!

難治な造血器腫瘍であるMDSに対する治療は難渋することが多い。本論文はAML幹細胞のマーカーであるCD123を用いてMDS幹細胞を分離し、その生物学的特性を明らかにし、さらにMDS幹細胞を標的とした治療法に言及したエレガントな内容である。C. JordanらはMDS幹細胞の特性を最新の手法をもって解析した。MDSの病勢が進行するにつれトランスクリプトーム解析によりタンパク合成とメタボローム解析により酸化的リン酸化が更新することを明らかにした。このような特性を基にOmacetaxineとBCL-2阻害薬(Venetoclax)の併用にてMDS幹細胞のタンパク合成と酸化的リン酸化が抑制され、viabilityが抑制されることを明らかにした。いまだ、有効な治療手段のないMDSの新たな治療法開発に重要な知見と考えられる論文である。

Venetoclax with azacitidine disrupts energy metabolism and targets leukemia stem cells in patients with acute myeloid leukemia.

Nat Med. 24(12):1859-1866

Pollyea DA, Stevens BM, Jones CL, Winters A, Pei S, Minhajuddin M, D'Alessandro A, Culp-Hill R, Riemondy KA, Gillen AE, Hesselberth JR, Abbott D, Schatz D, Gutman JA, Purev E, Smith C, Jordan CT

ここに注目!

米国ではこのところAMLに対する新規治療薬が次々と承認されている。臨床的にも高齢者AMLに対するVenetoclaxとアザシチジン併用療法は効果があることが報告されているが、本論文はC. Jordanのグループの一連の研究成果であり、Venetoclaxとアザシチジン併用療法はメタボローム解析によりAML幹細胞を標的にしたものであることが示されている。両薬剤の併用によりAML幹細胞のTCAサイクルが破綻し、さらに酸化的リン酸化が抑制されることでAML幹細胞の抑制につながることが患者検体を用いてきれいに証明されている。これまで有用な分子標的治療のなかったAMLに対してVenetoclaxとアザシチジン併用療法は、わが国でも臨床応用されるであろうが、その理論的妥当性を証明した重要な論文である。