ASH2020注目テーマ 「治療を変える臨床試験結果」#2血液疾患領域では、既存のパラダイムを大きく変える研究や新規治療法の開発が常に進められている。ここでは、ASH2020で発表された多くの臨床試験の中から、臨床現場に大きな影響を及ぼす可能性のある報告を紹介する。高齢の骨髄異形成症候群(MDS)患者に対する同種造血幹細胞移植による全生存率の向上、再発・難治性多発性骨髄腫(RRMM)に対するダラツムマブの皮下注射とポマリドミド、デキサメタゾン併用による無増悪生存期間(PFS)の延長、ステロイド抵抗性/依存性の慢性移植片対宿主病(GVHD)に対するルキソリチニブの有効性、ルーティンで投与することが多いトラネキサム酸の出血予防効果の検証の4題である。
造血器腫瘍患者の出血予防に対して
トラネキサム酸の有効性は認められず
Effects of Tranexamic Acid Prophylaxis on Bleeding Outcomes in Hematologic Malignancy: The A-TREAT Trial (#2)
Terry B. Gernsheimer(University of Washington School of Medicine)
2021.01.28
造血器腫瘍の治療により血小板減少症となった場合、出血予防のために血小板輸血を受ける患者は少なくない。そうした患者に対し、抗線溶作用による止血効果のあるトラネキサム酸の投与が出血予防に有用であるかどうかはこれまで明らかになっていなかった。Terry B. Gernsheimer氏は、多施設プラセボ対照二重盲検ランダム化比較臨床試験A-TREATの結果から「血小板輸血を予防的に受けている造血器腫瘍の患者に対して、トラネキサム酸にはプラセボと比較して優れた出血予防効果は認められなかった」と報告した。