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この論文に注目!Focus On

2026年1月の注目論文(Vol. 2)

坂田(柳元)麻実子(筑波大学 医学医療系 血液内科 教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2026年1月分(Vol. 2)は、坂田(柳元)麻実子氏が担当します。

Inherited resilience to clonal hematopoiesis by modifying stem cell RNA regulation

Science. 2026 Jan;391(6780):52-58. doi: 10.1126/science.adx4174. Epub 2026 Jan 1.

Gaurav Agarwal, Mateusz Antoszewski, Xueqin Xie, Yash Pershad, Uma P Arora, Chi-Lam Poon, Peng Lyu, Andrew J Lee, Chun-Jie Guo, Tianyi Ye, Laila Barakat Norford, Anna-Lena Neehus, Lucrezia Della Volpe, Lara Wahlster, Diyanath Ranasinghe, Tzu-Chieh Ho, Trevor S Barlowe, Arthur Chow, Alexandra Schurer, James Taggart, Benjamin H Durham, Omar Abdel-Wahab, Kathy L McGraw, James M Allan, Ruslan Soldatov, Alexander G Bick, Michael G Kharas, Vijay G Sankaran

ここに注目!

クローン性造血(clonal hematopoiesis:CH)は、骨髄系腫瘍をはじめとする造血器腫瘍の発症リスク因子であることが報告されている。CHにおけるクローン拡大の程度には個人差があり、その背景には遺伝的素因や環境因子(喫煙など)の関与が知られている。本研究では、CHに対する抵抗性を規定する遺伝的素因として、染色体17q22に位置する一塩基多型rs17834140-Tを同定した。rs17834140は、造血幹細胞(HSC)においてRNA結合タンパク質MSI2の発現を制御するエンハンサー領域に存在し、バリアントrs17834140-Tは野生型rs17834140-Cと比較して、HSCにおけるMSI2発現を選択的に低下させることが示された。MSI2はHSCの自己複製および維持に関与するRNA結合タンパク質であり、バリアントの機能解析およびMSI2結合標的の網羅的解析から、MSI2発現低下はHSCのフィットネス維持能を減弱させ、関連するRNAネットワークに変調をもたらすことが明らかとなった。さらに、経時的臨床検体の解析により、rs17834140-Tを有する個体ではCHクローンの拡大速度が有意に低下していた。ASXL1変異HSCは野生型HSCに比してクローン拡大に優位性を示すが、MSI2発現が同時に低下した場合には、この拡大アドバンテージは消失した。

以上の結果は、MSI2あるいはその下流標的分子を標的とした介入が、CHクローンの制御、ならびにこれを母地とする造血器腫瘍の予防につながる可能性を示唆する。