2025年3月の注目論文
宮﨑泰司（長崎大学 原爆後障害医療研究所 所長）
2025.03.06
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2025年3月分は、宮﨑泰司氏が担当します。
J Clin Oncol. 2024 Sep 16:JCO2400235. doi: 10.1200/JCO.24.00235. Online ahead of print.
Röllig C, Steffen B, Schliemann C, Mikesch JH, Alakel N, Herbst R, Hänel M, Noppeney R, Hanoun M, Kaufmann M, Weinbergerova B, Schäfer-Eckart K, Sauer T, Neubauer A, Burchert A, Baldus CD, Mertová J, Jost E, Niemann D, Novák J, Krause SW, Scholl S, Hochhaus A, Held G, Szotkowski T, Rank A, Schmid C, Fransecky L, Kayser S, Schaich M, Kramer M, Fiebig F, Haake A, Schetelig J, Middeke JM, Stölzel F, Platzbecker U, Thiede C, Müller-Tidow C, Berdel WE, Ehninger G, Mayer J, Serve H, Bornhäuser M.
ここに注目！
急性骨髄性白血病の標準的寛解導入療法ではダウノルビシン（DNR）などのアントラサイクリン系薬剤とシトシンアラビノシドを組み合わせて投与するが、適切なDNR投与量や寛解導入療法の回数（1回又は2回）は定まっていない。
この研究ではDNR投与量60mg/m2/day×3日間（総投与量180mg/m2）と90mg/m2/day×3日間（総投与量270mg/m2）を無作為比較（Part 1）し、さらに治療効果の得られた例を対象に導入療法2回目を実施する群としない群に無作為化して治療効果を比較（Part 2）した。組み入れられた患者年齢中央値は52歳。DNR投与量の比較において60mg群（160例）と90mg群（157例）の中間解析時点での両群の差が無く（早期良好反応44％と47％ P=0.983）、この比較は早期に中止され、以降は60mgによる寛解導入療法が実施された。
最終的なCRc（複合寛解）、3年無再発生存、3年全生存は、60mg群と90mg群でそれぞれ90％と89％（P=0.691）、54％と50％（P=0.561）、65％と58％（P=0.242）と差は見られなかった。最終的には864例が登録されたが、Part 2の導入療法の回数比較では、1回群（189例）と2回群（188例）のCRcは、87％と85％とで差は無かった。3年無再発生存は1回群と2回群で51％と60％で2回群でやや高かったが（P=0.091）、3年全生存は76％と75％で差は見られなかった（P=0.937）。DNR投与量90mg/m2は成績の向上には寄与せず、導入療法2回は無再発生存に有利な傾向は見られたが全生存の改善には結びつかなかった。国内ではDNR 50mg/m2/day×5日間（総投与量250mg/m2）が標準的な寛解導入療法として実施されているが、この研究の結果を考えると今後の検討が必要かもしれない。