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この論文に注目!Focus On

2025年1月の注目論文(Vol. 1)

市川聡(東北医科薬科大学 内科学第三(血液・リウマチ科) 講師)
張替秀郎(東北大学大学院 医学系研究科 血液内科学分野 教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2025年1月分(Vol. 1)は、市川聡氏と張替秀郎氏が担当します。

Glofitamab plus gemcitabine and oxaliplatin (GemOx) versus rituximab-GemOx for relapsed or refractory diffuse large B-cell lymphoma (STARGLO): a global phase 3, randomised, open-label trial

Lancet. 2024 Nov 16;404(10466):1940-1954. doi: 10.1016/S0140-6736(24)01774-4.

Jeremy S Abramson, Matthew Ku, Mark Hertzberg, Hui-Qiang Huang, Christopher P Fox, Huilai Zhang, Dok Hyun Yoon, Won-Seog Kim, Haifaa Abdulhaq, William Townsend, Charles Herbaux, Jan M Zaucha, Qing-Yuan Zhang, Hung Chang, Yanyan Liu, Chan Yoon Cheah, Herve Ghesquieres, Stephen Simko, Victor Orellana-Noia, Richard Ta, James Relf, Mark Dixon, Martine Kallemeijn, Estefania Mulvihill, Huang Huang, Linda Lundberg, Gareth P Gregory

ここに注目!

再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するglofitamabとgemcitabine・oxaliplatin(GemOx)の併用療法とrituximab-GemOx療法の比較:第Ⅲ相国際共同無作為化非盲検試験(STARGLO試験)

再発・難治性(r/r)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する二重特異性抗体薬(BsAb)と化学療法の併用について、様々な臨床試験が進行中である。今回、glofitamab(Glo)とgemcitabine・oxaliplatin(GemOx)の併用療法をrituximab(R)-GemOx療法と比較した第Ⅲ相試験(STARGLO試験)の結果が報告された。この試験では、自家移植非適応のr/r DLBCLが2:1の割合でGlo-GemOx群(183例)とR-GemOx群(91例)に割り付けられた。年齢中央値は68歳(範囲58~74)、前治療が1レジメンの例が6割、前治療に抵抗性であった例が6割を占めた。Glo-GemOx群において、Gloはobinutuzumab前治療の後、step-up dosingで投与され、Glo-GemOxとして8サイクル、その後Glo単剤で4サイクル投与された。R-GemOx群ではRとGemOxを8サイクル投与された。治療を完遂したのはGlo-GemOx群76例、R-GemOx群26例で、中止の理由が病勢進行あるいは奏効不良であったのは両群とも42例で、COVID-19による中止もあった(それぞれ25例、5例)。主要評価項目である全生存期間は、追跡期間中央値20.7カ月において、Glo-GemOx群がR-GemOx群に比べて有意に延長しており(25.5カ月 vs 9.0カ月、p=0.0064)、全奏効率もGlo-GemOx群で良好だった(50.3% vs 22.0%、p<0.0001)。Glo-GemOx群でサイトカイン放出症候群(CRS)が44%に発生したものの、ほとんどが軽度であった。以上から、Glo-GemOxは移植非適応r/r DLBCLに対する有望な治療選択肢と結論づけられた。固定期間でのBsAbと化学療法の併用で、CAR-T細胞療法にも匹敵するような持続的な奏効が得られているのは興味深い。 BsAb併用化学療法の今後の展開が期待される。