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この論文に注目!Focus On

2025年12月の注目論文

木崎昌弘(埼玉医科大学 名誉教授/よみうりランド慶友病院 副院長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2025年7月分は、木崎昌弘氏が担当します。

A BCMA-mRNA vaccine is a promising therapeutic for multiple myeloma.

Blood. 2025 November 6; 146(19):2322-2335. doi: 10.1182/blood.2025028597

Dutta D, Liu J, Wen K, Ray A, Salatino A, Liu X, Gulla A, Hideshima T, Song Y, Anderson KC

ここに注目!

mRNAワクチンは、画期的なワクチンとしてCOVID-19感染に対して大きな効果をもたらした。本論文は、多発性骨髄腫に特異的に発現するBCMAに対するmRNAワクチンの有効性を、細胞レベル及びマウスモデルを用いて示し、次世代の骨髄腫治療として注目される内容である。KC Andersonらのグループは、BCMA mRNAを脂質ナノ粒子(LNPs)に封入した製剤を開発した。さらに、BCMA特異的免疫応答を増強するためにtoll-like receptor 3アゴニストのポリイノシン:ポリシチジル酸[poly(I:C)]もLNPに封入した。BCMA mRNA LNPは、樹状細胞に取り込まれ、BCMA特異的CD8陽性細胞障害性T細胞(CTL)の増幅と活性化を起こすことが示された。これらのCTLはU266細胞やCD138陽性骨髄腫細胞の障害をもたらしたが、BCMAを欠損したU266細胞やCD138陰性骨髄腫細胞には影響を与えなかった。さらに、C57BL/6JマウスにBCMAワクチンを接種すると、脾臓樹状細胞とBCMA特異的CTLが活性化され、腫瘍増殖抑制効果が確認された。これらの作用は、poly(I:C)との併用でさらに免疫応答が増強された。BCMA mRNAワクチンは、今後臨床応用を目指すものと思われるが、骨髄腫の新たな治療選択になり得る可能性を持つものと思われ期待される。