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この論文に注目!Focus On

2024年9月の注目論文(Vol. 2)

伊豆津宏二(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科 科長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2024年5月分(Vol. 2)は、伊豆津宏二氏が担当します。

CD22-directed CAR T-cell therapy for large B-cell lymphomas progressing after CD19-directed CAR T-cell therapy: a dose-finding phase 1 study

Lancet. 2024 Jul 9:S0140-6736(24)00746-3. doi: 10.1016/S0140-6736(24)00746-3. Online ahead of print.

Frank MJ, Baird JH, Kramer AM, Srinagesh HK, Patel S, Brown AK, Oak JS, Younes SF, Natkunam Y, Hamilton MP, Su YJ, Agarwal N, Chinnasamy H, Egeler E, Mavroukakis S, Feldman SA, Sahaf B, Mackall CL, Muffly L, Miklos DB; CARdinal-22 Investigator group.

ここに注目!

CD19標的CAR-T細胞療法後の再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者を対象とした、新しいCD22標的CAR-T細胞療法の単施設第I相試験の報告。既存のCD19標的CAR-T細胞療法で再発・難治性LBCLの完全奏効を期待できるのは50%前後に留まり、CAR-T細胞療法後の再発・難治例の予後は極めて厳しい。このような患者に対してCD20xCD3二重特異性抗体が新たな治療選択肢として期待されているが、CAR-T細胞療法抵抗性の患者での効果は限定的である。この試験では、CD22を標的とし、共刺激ドメインとして4-1BBを用いた新たなCAR-T細胞療法が検討され高い効果と安全性が示された。この結果を受けて、CAR-T細胞療法後の再発・難治性LBCL患者を対象に多施設(米国)での第II相試験が始まっている(NCT05972720)。これまでもB細胞リンパ腫に対して、抗体薬物複合体、二重特異性抗体などCD22を標的とした治療開発が行なわれてきたが、今のところ承認に至ったものはなく、CD22標的CAR-T細胞療法の今後の試験結果が注目される。