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この論文に注目!Focus On

2023年8月の注目論文(Vol. 1)

伊豆津宏二(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科 科長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2023年8月分(Vol. 1)は、伊豆津宏二氏が担当します。

First-Line Venetoclax Combinations in Chronic Lymphocytic Leukemia

N Engl J Med. 2023 May 11;388(19):1739-1754.

Eichhorst B, Niemann CU, Kater AP, Fürstenau M, von Tresckow J, Zhang C, Robrecht S, Gregor M, Juliusson G, Thornton P, Staber PB, Tadmor T, Lindström V, da Cunha-Bang C, Schneider C, Poulsen CB, Illmer T, Schöttker B, Nösslinger T, Janssens A, Christiansen I, Baumann M, Frederiksen H, van der Klift M, Jäger U, Leys MBL, Hoogendoorn M, Lotfi K, Hebart H, Gaska T, Koene H, Enggaard L, Goede J, Regelink JC, Widmer A, Simon F, De Silva N, Fink AM, Bahlo J, Fischer K, Wendtner CM, Kreuzer KA, Ritgen M, Brüggemann M, Tausch E, Levin MD, van Oers M, Geisler C, Stilgenbauer S, Hallek M; GCLLSG, the HOVON and Nordic CLL Study Groups, the SAKK, the Israeli CLL Association, and Cancer Trials Ireland.

ここに注目!

未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者を対象として行なわれた第Ⅲ相試験(GAIA-CLL13)で、リツキシマブ併用化学療法(FCR療法またはベンダムスチン・リツキシマブ併用療法)、ベネトクラクス・リツキシマブ併用療法、ベネトクラクス・オビヌツズマブ併用療法、ベネトクラクス・オビヌツズマブ・イブルチニブ併用療法の4群が比較された。いずれも固定期間の治療で、ベネトクラクスは約1年間内服する。プライマリエンドポイントは微小残存病変の陰性化と無増悪生存期間である。FCR療法が可能な患者であるので、いわゆる若年・フィットの患者が対象であった。ベネトクラクス・オビヌツズマブを併用する治療の微小残存病変陰性化割合、無増悪生存期間が優れており、イブルチニブ併用の有用性は明らかでなかった。若年・フィットの未治療CLL患者におけるベネトクラクス・オビヌツズマブ併用療法(日本では未承認)の有用性を支持する結果であるが、現在、日本でも承認されているイブルチニブ単剤療法やアカラブルチニブ・オビヌツズマブ併用療法などの長期内服治療と効果・安全性の点でどちらが有用かは分かっていない。同じドイツのグループの次の第Ⅲ相試験(CLL17、NCT04608318)においてイブルチニブ単剤療法、ベネトクラクス・オビヌツズマブ併用療法、ベネトクラクス・イブルチニブ併用療法の比較が行なわれている。