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この論文に注目!Focus On

2023年4月の注目論文(Vol. 1)

宮﨑泰司(長崎大学 原爆後障害医療研究所 所長)

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血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2023年4月分(Vol. 1)は、宮﨑泰司氏が担当します。

Contribution of mutant HSC clones to immature and mature cells in MDS and CMML, and variations with AZA therapy

Blood. 2022 Dec 9:blood.2022018602. doi: 10.1182/blood.2022018602. Online ahead of print.

Schnegg-Kaufmann AS, Thoms JAI, Bhuyan GS, Hampton H, Vaughan L, Rutherford KD, Kakadia PM, Lee HM, Johansson EM, Failes TW, Arndt GM, Koval J, Lindeman R, Warburton P, Rodriguez-Meira A, Mead AJ, Unnikrishnan A, Davidson S, Polizzotto M, Hertzberg M, Papaemmanuil E, Bohlander SK, Faridani O, Jolly CJ, Zanini F, Pimanda JE.

ここに注目!

骨髄異形成症候群(MDS)や慢性骨髄単球性白血病(CMML)に対してアザシチジンなどの脱メチル化薬が、異常な造血クローン状態にどのように作用して造血回復をもたらすのかについて、治療前後において単一細胞レベルでゲノム変異を解析した報告である。その結果、治療反応の有無にかかわらず、ゲノム変異を有する前駆細胞は、変異の程度に関わらず骨髄系成熟細胞(好中球や単球)に分化していた。治療反応を示す例では治療後に、クローン構成の変化が生ずるのではなく、変異を有する前駆細胞から成熟細胞への寄与が増していると考えられた。しかし、TP53両アレル異常を有する場合は成熟造血細胞への分化が見られず、治療後に変異クローンが減少していた。この報告では解析例数は少ないが、MDSやCMMLにおける脱メチル化薬治療反応時の造血状態は、急性骨髄性白血病に見られる「寛解」とは大きく違っていることが明らかとなった。