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この論文に注目!Focus On

2022年5月の注目論文(Vol. 1)

前田嘉信(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 血液・腫瘍・呼吸器内科学 教授)

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血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2022年5月分(Vol. 1)は、前田嘉信氏が担当します。

Autologous Transplant versus Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy for Relapsed DLBCL in Partial Remission

Blood. 2021 Sep 27:blood.2021013289. doi: 10.1182/blood.2021013289. Online ahead of print.

Shadman M, Pasquini MC, Ahn KW, Chen Y, Turtle CJ, Hematti P, Cohen JB, Khimani F, Ganguly S, Merryman RW, Yared JA, Locke FL, Ahmed N, Munshi P, Beitinjaneh A, Reagan P, Herrera AF, Sauter CS, Kharfan-Dabaja MA, Hamadani M.

ここに注目!

CAR-T療法の登場は、再発・難治性DLBCLの治療戦略に大きな影響を与えている。治療抵抗性(74%、残り26%は12カ月以内の再発例)を主な対象とした無作為化比較試験(ZUMA-7)では、速やかにCAR-Tを投与した群の方が、自家移植に割り付けられた群より予後が良好であった。同様の対象による別試験(BELINDA)では、CAR-T投与前にサルベージ療法が許容されていたが、結果的に進行(PD)でのCAR-T投与が多くなったこともあり、CAR-T群の優位性が証明されていない。CAR-T投与前の腫瘍制御の重要性がより鮮明になりつつあるが、本論文ではサルベージ療法で部分奏効(PR)となった症例について、CIBMTRのレジストリーデータを活用し検討している。その結果、CAR-T群に比べ自家移植群の方が、再発が少なく全生存(OS)が有意に良好であった。ただしCAR-T群の方が5cmを超える残存病変例が多く、前治療歴が多いため、前治療歴を2レジメン以下に限って解析すると、両群に有意差はなかった。CAR-T時代にあっても自家移植の役割はまだ残っており、化学療法への反応性を予測することが重要である。ZUMA-7ではdouble-hit/expressor lymphomaが5割含まれていたが、分子学的マーカー等により、二次治療における自家移植ならびにCAR-Tの適応の確立が待たれる。