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特集治療の幅が広がった多発性骨髄腫再発・難治例に新たな治療選択肢(4)特集で多発性骨髄腫(MM)を取り上げてから3年余りが経過した。当時は “新薬ラッシュ”で、プロテアソーム阻害薬(PI)、免疫調節薬(IMiDs)、抗体薬をどのように組み合わせ、どのタイミングで用いるかが議論された。
その後、ダラツムマブは初発MMに保険適用となり、2020年には新たな抗CD38抗体薬のイサツキシマブが登場した。さらにPI、IMiDs、抗体薬の3クラスの薬剤とは異なる作用機序を有するselinexor、ベネトクラクス、BCMA-BiTEなどの新規治療薬の開発が進んでいる。CAR-T療法の治験も進行中であり、再発・難治性MMの治療選択肢は増えつつある。また、MM細胞の遺伝子変異のパネルシーケンスが行なわれるようになり、変異遺伝子の種類に応じた個別化医療も視野に入ってきた。新たな治療法や遺伝子診断を治療成績の向上にどう結び付けていくのか、4人の専門医に解説していただいた。
(責任編集 柴山浩彦)

染色体異常・遺伝子変異の臨床応用
層別化と個別化医療の実際と将来展望

飯田真介(名古屋市立大学大学院 医学研究科 血液・腫瘍内科学分野)

多発性骨髄腫(MM)は、治癒困難な疾患だが、近年、数多くの新規薬剤が導入され、患者の予後は大きく改善している。患者の予後予測や治療選択には、FISH法を用いた染色体異常による病型分類や、次世代シークエンサーを用いた変異ドライバー遺伝子の解析結果に基づく個別化医療の試みが始まっている。ここでは、MM患者には高齢者が多いことを踏まえた上で、染色体異常や遺伝子変異の臨床応用の実際と今後の展望について解説する。