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特集造血幹細胞移植をめぐる最近の話題 2022(5)同種造血幹細胞移植における移植片対宿主病(graft-versus-host disease:GVHD)は移植の成否を分ける重要な合併症であり、近年、急性GVHDと慢性GVHDでは病態が異なることなども分かってきている。そして、GVHD予防や感染症対策などの進歩によっても、移植成績の向上がもたらされている。ここでは、同種造血幹細胞移植の最近の話題として急性GVHDの病態、GVHD予防における移植後シクロホスファミド、急性GVHDの治療、慢性GVHDの診断と治療、移植後の感染症管理の診断と治療という5つのテーマを取り上げ、それぞれ橋本大吾先生、杉田純一先生、村田誠先生、稲本賢弘先生、森毅彦先生にご解説いただいた。(責任編集 前田嘉信)

造血幹細胞移植後の感染症
適切な管理が移植成績の向上に直結

山崎理絵(慶應義塾大学 医学部 輸血・細胞療法センター)
森毅彦(東京医科歯科大学 血液内科)

血液疾患の患者は高度な免疫不全から、しばしば重篤な感染症を合併し、致命的な経過を辿ってしまう可能性が高い。そのため、予防、スクリーニング・早期診断、発症後の早期介入といった一連の適切な管理が求められる。血液疾患治療の中でも造血幹細胞移植後は長期にわたり高度な免疫不全がみられるため、通常の化学療法とは異なる管理が求められる。本稿では、造血幹細胞移植、特に同種造血幹細胞移植後の感染症管理について、著者の私見を含めて、その基本的な考え方と最近の知見の幾つかを概説する。