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特集造血幹細胞移植をめぐる最近の話題 2022(1)同種造血幹細胞移植における移植片対宿主病(graft-versus-host disease:GVHD)は移植の成否を分ける重要な合併症であり、近年、急性GVHDと慢性GVHDでは病態が異なることなども分かってきている。そして、GVHD予防や感染症対策などの進歩によっても、移植成績の向上がもたらされている。ここでは、同種造血幹細胞移植の最近の話題として急性GVHDの病態、GVHD予防における移植後シクロホスファミド、急性GVHDの治療、慢性GVHDの診断と治療、移植後の感染症管理の診断と治療という5つのテーマを取り上げ、それぞれ橋本大吾先生、杉田純一先生、村田誠先生、稲本賢弘先生、森毅彦先生にご解説いただいた。(責任編集 前田嘉信)

急性GVHDの病態生理をめぐる最新の知見
免疫寛容だけではなく組織寛容が鍵

橋本大吾(北海道大学大学院 医学研究院 内科学分野 血液内科学教室)

同種造血幹細胞移植における移植片対宿主病(GVHD)は、移植の成否を分ける重要な合併症で、患者の死亡やQOLの低下などを招く。近年、GVHDに関する研究が進み、その病態生理が少しずつ明らかになってきた。急性GVHDでは免疫寛容に加え、組織寛容がキーワードとなっている。ここでは急性GVHDをめぐる最新の知見について解説する。