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特集急性白血病の新規治療分子標的薬が続々登場、CAR-T療法の開発も進む(1)急性骨髄性白血病(AML)の治療の基本骨格は長年変わらなかったが、わが国でもFLT3阻害薬、IDH1/2阻害薬、BCL2阻害薬などが導入されつつあり、いよいよAML治療のパラダイムが変わろうとしている。急性リンパ性白血病(ALL)でも、抗体医薬のブリナツモマブが再発・難治性B細胞性急性リンパ性に対して承認され、新薬の開発が進んでいる。さらにAMLに対するわが国独自のCAR-T療法の開発も進められている。このように、これまでの停滞を一気に解消するかのように多くの薬剤、抗体薬、細胞療法が急性白血病に投入されている。ここでは、AML、ALL、CAR-T療法の各分野の専門家に、急性白血病治療の最前線について解説してもらった。(責任編集 宮﨑泰司)

AMLに対するFLT3阻害薬の臨床応用始まる
予後不良、再発・難治例で奏効、維持療法への展開も

石川裕一(名古屋大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学)

急性骨髄性白血病(AML)に対する新たな分子標的療法が、近年注目を集め、臨床応用も始まった。FMS様チロシンキナーゼ(FLT)3阻害薬もその一つで、予後不良のFLT3-ITD変異陽性AMLでの治療効果が認められ、わが国では、再発・難治性AMLに対する治療薬として承認された。現在、初発症例に対する化学療法との併用、同種移植後の維持療法としての効果などの臨床試験も進められている。FLT3阻害薬の分子メカニズムとこれまでの研究結果、今後の展望と課題について概説する。