血液専門医と医療関係者のための情報サイト「ヘマトパセオ」

この論文に注目!Focus on

2020年9月の注目論文(Vol. 1)

柴山浩彦(大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学 准教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2020年9月分(Vol. 1)は、柴山浩彦氏が担当します。

Genome-Wide Somatic Alterations in Multiple Myeloma Reveal a Superior Outcome Group

J Clin Oncol. 2020 Jul 20:JCO2000461. doi: 10.1200/JCO.20.00461.

Samur MK, Aktas Samur A, Fulciniti M, Szalat R, Han T, Shammas M, Richardson P, Magrangeas F, Minvielle S, Corre J, Moreau P, Thakurta A, Anderson KC, Parmigiani G, Avet-Loiseau H, Munshi NC

ここに注目!

純化した骨髄腫細胞を用いた全ゲノム解析(WGS)の結果と臨床経過を比較し、極めて予後が良好な症例の遺伝子変異の特徴を見出している。本研究は、IFM/DFCI 2009試験(移植適応の骨髄腫患者に対するVRd療法とVRd+自家移植を比較した試験であり、初期治療としては全例にVRd療法を施行)に参加した症例のうちの183例の検体を用いて、WGSを実施している。予後良好な遺伝子変異をもつ症例は17%に認められており、その特徴は、加齢に伴う遺伝子変異と9番染色体増幅を伴う低DNA損傷であり、NRAS変異が高頻度に認められる。この変異の特徴をもつ症例の予後が良好なことは、他のコホートでも確認されており、今後、この特徴的変異をもつ症例に対しては、大量化学療法や維持療法の省略など、過剰治療にならない工夫が必要であると思われた。

Genomic Profiling of Smoldering Multiple Myeloma Identifies Patients at a High Risk of Disease Progression

J Clin Oncol. 38(21):2380-2389

Bustoros M, Sklavenitis-Pistofidis R, Park J, Redd R, Zhitomirsky B, Dunford AJ, Salem K, Tai YT, Anand S, Mouhieddine TH, Chavda SJ, Boehner C, Elagina L, Neuse CJ, Cha J, Rahmat M, Taylor-Weiner A, Van Allen E, Kumar S, Kastritis E, Leshchiner I, Morgan EA, Laubach J, Casneuf T, Richardson P, Munshi NC, Anderson KC, Trippa L, Aguet F, Stewart C, Dimopoulos MA, Yong K, Bergsagel PL, Manier S, Getz G, Ghobrial IM

ここに注目!

くすぶり型骨髄腫(SMM)は、年10%程度の頻度で症候性MMに進展することが知られているが、症候性MMに進展するSMMの遺伝的特徴は明らかにされていなかった。本研究では、214例のSMM症例の検体を用いて、166例の全エクソン解析と48例の標的遺伝子解析を行なっている。その結果、SMMの状態でも、すでに骨髄腫細胞には症候性MMと同じ遺伝子変異が認められることが示された。また、MAPK経路、DNA修復経路、MYC遺伝子の変異を有することが、症候性MMに進展するそれぞれ独立したリスク因子であることが示された。さらに、このことは他のコホートでも確認された。ゆえに現在、用いられている臨床的リスク因子と組み合わせることで、早期治療介入を行なうべきSMM症例が選別できる可能性が示された。

Carfilzomib, dexamethasone, and daratumumab versus carfilzomib and dexamethasone for patients with relapsed or refractory multiple myeloma (CANDOR): results from a randomised, multicentre, open-label, phase 3 study

Lancet. 396(10245):186-197

Dimopoulos M, Quach H, Mateos MV, Landgren O, Leleu X, Siegel D, Weisel K, Yang H, Klippel Z, Zahlten-Kumeli A, Usmani SZ

ここに注目!

カルフィルゾミブ(K)とダラツムマブ(D)は、再発・難治(RR)MMに対し有効であることが示されているが、併用した場合の有効性、安全性については不明であった。本論文では、K+D+デキサメタゾン(d)併用レジメンをK+dと比較した第Ⅲ相試験の結果が報告された。前治療レジメン数1~3のRRMM466例が2:1にKDd療法(312例)とKd療法(154例)にランダム化された。追跡期間の中央値が17カ月の時点で、主要評価項目のPFSが、KDd群が未到達、Kd群が15.8カ月であり、有意にKDd群で延長した(HR: 0.63, p=0.0027)。また、治療期間の中央値は70.1週と40.3週、グレード3以上の有害事象は、それぞれ82%と74%にみられたが、治療中止に至った有害事象は22%と25%で同程度であった。以上より、KDd併用治療はRRMMに対する新たな治療オプションとして加わったことになるが、KDd療法を選択すべき患者像は、今後、明らかにしていく必要がある。