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2020年5月の注目論文

坂田(柳元)麻実子(筑波大学 医学医療系 血液内科 准教授)

Protective Effects of Dietary Intake of Antioxidants and Treatment-Related Toxicity in Childhood Leukemia: A Report From the DALLT Cohort.

J Clin Oncol. 2020 Apr 24:JCO1902555. doi: 10.1200/JCO.19.02555.

Ladas EJ, Blonquist TM, Puligandla M, Orjuela M, Stevenson K, Cole PD, Athale UH, Clavell LA, Leclerc JM, Laverdiere C, Michon B, Schorin MA, Greene Welch J, Asselin BL, Sallan SE, Silverman LB, Kelly KM

ここに注目!

化学療法中に抗酸化物質を摂取することによるリスク・ベネフィットは明らかではない。小児ALLの前向き臨床試験に登録された794例に対して、食物摂取頻度アンケートを実施し、抗酸化物質の摂取が治療関連毒性および生存に与える影響について調べた。食事調査は、診断時は614例(77%)で、寛解導入療法終了時は561例(71%)で解析可能であった。両時点の食事調査を行なった513例(65%)のうち、寛解導入療法および寛解後療法中の細菌感染症は120例(23%)および87例(16%)、grade3以上の粘膜炎は22例(4%)および55例(10%)に発症した。食事中の抗酸化物質の摂取量が高い場合に、感染症と粘膜炎の発生率は有意に低かった。ALLの再発または無病生存との関連はみられなかった。抗酸化物質の食品以外からの補充によっては、感染症や粘膜炎の発生率低下はみられなかった。この研究から、抗酸化物質を含むバランスの取れた食事カウンセリングによって、小児ALL治療の感染症や粘膜炎を減らせる可能性が示唆された。

TMEM30A Loss-Of-Function Mutations Drive Lymphomagenesis and Confer Therapeutically Exploitable Vulnerability in B-cell Lymphoma

Nat Med. 26(4):577-588

Daisuke Ennishi, Shannon Healy, Ali Bashashati, Saeed Saberi, Christoffer Hother, Anja Mottok, Fong Chun Chan, Lauren Chong, Libin Abraham, Robert Kridel, Merrill Boyle, Barbara Meissner, Tomohiro Aoki, Katsuyoshi Takata, Bruce W Woolcock, Elena Viganò, Michael Gold, Laurie L Molday, Robert S Molday, Adele Telenius, Michael Y Li, Nicole Wretham, Nancy Dos Santos, Mark Wong, Natasja N Viller, Robert A Uger, Gerben Duns, Abigail Baticados, Angel Madero, Brianna N Bristow, Pedro Farinha, Graham W Slack, Susana Ben-Neriah, Daniel Lai, Allen W Zhang, Sohrab Salehi, Hennady P Shulha, Derek S Chiu, Sara Mostafavi, Alina S Gerrie, Da Wei Huang, Christopher Rushton, Diego Villa, Laurie H Sehn, Kerry J Savage, Andrew J Mungall, Andrew P Weng, Marcel B Bally, Ryan D Morin, Gabriela V Cohen Freue, Louis M Staudt, Joseph M Connors, Marco A Marra, Sohrab P Shah, Randy D Gascoyne, David W Scott, Christian Steidl

ここに注目!

TMEM30A遺伝子はphospholipid flippase(P4-ATPase)のβサブユニットをコードし、細胞膜の必須構成要素であるホスファチジルセリンの非対称分布およびマクロファージによって認識される"eat me"シグナルの制御に重要な働きをする。ブリティッシュコロンビアの集団ベースのレジストリを用いて、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)について、ゲノムおよびトランスクリプトームの統合的解析を行なった。TMEM30A遺伝子に両アレル機能喪失型変異/欠失がある場合には予後良好であった。 TMEM30A欠損細胞株およびTMEM30A変異のある初代培養細胞では抗がん剤の取り込みが増加し、抗がん剤への感受性が増強していた。さらに、TMEM3欠損B細胞腫瘍を移植したマウスでは、"don't eat me"シグナルに関わるCD47阻害による腫瘍抑制効果が増強した。一方で、TMEM30A欠損によって抗原刺激後のB細胞シグナルが増強しており、リンパ腫発生時にはTMEM30A変異/欠失細胞は有利に選択されることが示唆された。この研究により、DLBCLにおけるTMEM30A変異の多面的な機能が明らかとなった。

Efficacy of Ruxolitinib in Patients With Chronic Neutrophilic Leukemia and Atypical Chronic Myeloid Leukemia.

J Clin Oncol. 38(10):1006-1018

Dao KT, Gotlib J, Deininger MMN, Oh ST, Cortes JE, Collins RH Jr, Winton EF, Parker DR, Lee H, Reister A, Schultz, Savage S, Stevens, Brockett C, Subbiah N, Press RD, Raess PW, Cascio M, Dunlap J, Chen Y, Degnin C, Maxson JE, Tognon CE, Macey T, Druker BJ, Tyner JW

ここに注目!

慢性好中球性白血病(CNL)およびこれより頻度は低いものの非定型的慢性骨髄性白血病(aCML)ではCSF3R遺伝子の活性型変異がみられ、JAK-STATシグナルが恒常的に活性化する。これをヒントに、CNLおよびCMLを対象にJAK1/2阻害剤であるルキソリチニブの安全性と有効性を調べた第II相試験。主要評価項目は、最初に登録された25例の6サイクル終了時点(1サイクルあたり28日間)における血液学的総奏効割合(完全寛解[CR]+部分寛解[PR]; ORR)とした。さらに44例まで登録し、grade3以上の有害事象等の副次評価項目を調べた。ORRは最初の25例では32%(PR 8例)にみられ、CSF3R変異群と野生型群では、CSF3R変異群で奏効率が高かった(CSF3R変異群 vs 野生型群 7/13(54%) vs 1/12 (8%)、P= .030)。全44例ではORR 35%(PR 11例およびCR 4例)であった。CSF3R変異アレル頻度はCR群ではPRあるいは不応群と比較して顕著に減少していた。grade3以上の貧血と血小板減少症はそれぞれ34%と14%にみられた。この研究から、CNLおよびaCMLによるルキソリチニブの忍容性は良好であり、CNLおよびCSF3R変異のある場合に特に効果が期待できることが示唆される。