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2020年6月の注目論文(Vol. 2)

張替秀郎(東北大学大学院 医学系研究科 血液・免疫病学分野 教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2020年6月分(Vol. 2)は、張替秀郎氏が担当します。

Ruxolitinib for Glucocorticoid-Refractory Acute Graft-versus-Host Disease

N Engl J Med. 382(19):1800-1810

Zeiser R, von Bubnoff N, et al.

ここに注目!

ステロイド抵抗性急性GVHDに対するRuxolitinib治療

同種造血幹細胞移植後のステロイド抵抗性急性GVHDは難治であり、非再発死亡の原因となる。本研究はステロイド抵抗性GVHDに対してJAK阻害剤であるRuxolitinibの有効性を検証した第III相ランダム化比較試験である。対象はGrade II-IVのステロイド抵抗性急性GVHDであり、Ruxolitinib群(10mg、1日2回:154例)と主治医選択による治療群(ATG、mTOR阻害剤、TNF阻害剤、MSC、MMFなど:155例)に割付けされた。治療反応性はd28(62% vs 39%)、d56(40% vs 22%)と、いずれもRuxolitinib群で高く、無増悪生存期間もRuxolitinib群で長かった(5カ月vs 1カ月)。Ruxolitinib群では血球減少の頻度が高く認められたものの、この難治病態に対する新たな治療薬としてRuxolitinibの有用性が示された。

ここに注目!

赤血球由来の微小小胞体がJAK2V617F骨髄増殖性腫瘍の血管攣縮を誘導する

心血管イベントはJAK2V617F骨髄増殖性腫瘍の死亡原因として重要であるが、そのメカニズムの詳細は明らかになっていない。本研究においてJAK2V617Fマウスの動脈は血管収縮刺激への反応が亢進していること、それは血管内皮におけるNO(一酸化窒素)経路の障害によることが明らかとなった。さらに詳細に検討したところ、その反応はJAK2V617F赤血球の微小小胞体に含まれるmyeloperoxidaseによるROS(活性酸素種)を介して誘導されることが示された。実際に、シンバスタチンといった抗酸化剤がこの動脈の過反応を修正したことから、シンバスタチンはJAK2V617F骨髄増殖性腫瘍における心血管イベント抑制の治療オプションとなり得ることが示唆された。

ここに注目!

樹状細胞由来ヘプシジンは腸内細菌叢から鉄を取り上げ粘膜障害の治癒を誘導する

ヘプシジンは、生体の鉄の恒常性維持におけるmaster regulatorである。本研究では、マウスの実験的腸管障害モデルにおいてヘプシジンが腸管粘膜の修復を促進させること、そのヘプシジンは主要な分泌臓器である肝臓由来ではなく、腸管の樹状細胞由来であることが明らかとなった。腸管樹状細胞からのヘプシジン分泌は腸管細菌によって誘導され、分泌が亢進したヘプシジンは腸管のマクロファージからの鉄放出を抑制し、結果として腸内細菌の浸潤を抑制し粘膜の修復がなされることが示された。本研究は、炎症性腸疾患の治療におけるヘプシジン様作用薬の可能性を示唆するものであるが、同種造血幹細胞移植後の腸管GVHDにも有効であるかどうか、興味深い。