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2020年7月の注目論文(Vol. 2)

宮﨑泰司(長崎大学 原爆後障害医療研究所 所長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2020年7月分(Vol. 2)は、宮﨑泰司氏が担当します。

Venetoclax Combines Synergistically With FLT3 Inhibition to Effectively Target Leukemic Cells in FLT3-ITD+ Acute Myeloid Leukemia Models

Haematologica. 2020 May 15:haematol.2019.244020. doi: 10.3324/haematol.2019.244020.

Mali RS, Zhang Q, DeFilippis R, Cavazos A, Kuruvilla VM, Raman J, Mody V, Choo EF, Dail M, Shah NP, Konopleva M, Sampath D, Lasater EA

ここに注目!

急性骨髄性白血病(AML)に対する分子標的療法は、FLT3阻害薬が使用できるようになって現実のものとなったが、BCL2阻害薬であるvenetoclax(VEN)も期待される分子標的薬である。VEN単剤投与はFLT3変異陽性AMLに対しては十分な効果を発揮できていない。そこで本研究では、患者由来異種移植(PDX)モデルを用いてFLT3変異陽性AMLに対するFLT3阻害薬とVEN併用の効果を検討している。その結果、quizartinibとVEN併用はそれぞれの単剤投与と比較してよりすぐれた効果が得られており、また、quizartinibとVENの併用効果はFLT3阻害薬による発現抑制を介したBCL-XLやMCL-1の間接的な抑制と相まって発揮されていることが示唆されている。今後、臨床での検証が待たれる治療法である。

Increased Tumor Burden in Chronic Myeloid Leukemia Patients After 36 Months of Imatinib Discontinuation

Blood. 2020 Jun 9:blood.2019004371. doi: 10.1182/blood.2019004371.

Diral E, Mori S, Antolini L, Abruzzese E, le Coutre P, Martino B, Pungolino E, Elena C, Bergamaschi M, Assouline S, Di Bona E, Gozzini A, Andrade Campos MM, Stagno F, Iurlo A, Pirola A, Fontana D, Petiti J, Bonanomi ML, Crivori P, Piazza R, Fava C, Gambacorti-Passerini CB

ここに注目!

慢性骨髄性白血病(CML)では、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)治療によって一定期間BCR-ABL1融合遺伝子を同定できない状況を維持できた症例ではTKIを中止しても、長期にわたってCML再発がみられないことが複数の臨床試験で報告されている。世界的に見ると、治療反応良好な例ではTKI中止が一般診療として実施されようとしている。本研究は、イタリアのISAV試験症例においてデジタルPCRを用いてTKI長期中止後のCMLクローンサイズを検討したものである。18カ月以上の完全分子遺伝学的反応を維持できた107名でTKIが中止された。中止後の観察期間中央値49カ月で56名が主要分子反応(BCR-ABL1定量<0.01%)を喪失しており、TKI中止後5年の無再発生存割合は47.4%であった。また、TKI中止時と36カ月後のサンプルが得られた無再発の34名についてデジタルPCRを用いてBCR-ABL1/ABL1比を検討したところ、平均で0.00143+/−0.00060%から36カ月時点では0.015+/−0.0035%へ増加していた。TKI中止後、CMLクローンサイズが増加していることを示唆するデータであり、TKI中止後も長期観察を含む適切な臨床的管理の重要性を示している。

Venetoclax Plus LDAC for Newly Diagnosed AML Ineligible for Intensive Chemotherapy: A Phase 3 Randomized Placebo-Controlled Trial

Blood. 135(24):2137-2145

Wei AH, Montesinos P, Ivanov V, DiNardo CD, Novak J, Laribi K, Kim I, Stevens DA, Fiedler W, Pagoni M, Samoilova O, Hu Y, Anagnostopoulos A, Bergeron J, Hou JZ, Murthy V, Yamauchi T, McDonald A, Chyla B, Gopalakrishnan S, Jiang Q, Mendes W, Hayslip J, Panayiotidis P

ここに注目!

BCL-2の阻害薬であるvenetoclax(VEN)を化学療法と併用することで急性骨髄性白血病(AML)の治療成績を改善できるかを検討するため、通常化学療法に不耐容の未治療AML患者を対象に、低用量シタラビン(LDAC)とVEN(L+V)またはプラセボの併用(L+P)を2:1に割り付けた第Ⅲ相試験が実施された。211名が登録され、主要評価項目は全生存割合であった。予定された時点の解析では生存期間中央値がL+V、L+Pでそれぞれ7.2カ月、4.1カ月(P=0.11)と有意差はみられなかったが、6カ月の観察期間を追加して解析したところ生存期間中央値は8.4カ月、4.1カ月と差が大きくなり、ハザード比0.70(P=0.04)と有意差がみられた。有害事象ではL+V群に好中球減少が多かったが、感染症の明らかな増加はみられなかった。主要評価項目で有意差がなかったものの、通常化学療法不耐容AMLに対してLDACとVENの併用は生存期間を延長することが示唆されており、今後、種々の治療とVENとの併用が期待される。