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2020年7月の注目論文(Vol. 1)

前田嘉信(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 血液・腫瘍・呼吸器内科学 教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2020年7月分(Vol. 1)は、前田嘉信氏が担当します。

Composite GRFS and CRFS Outcomes After Adult Alternative Donor HCT

J Clin Oncol. 2020 May 4:JCO1900396. doi: 10.1200/JCO.19.00396.

Mehta RS, Holtan SG, Wang T, Hemmer MT, Spellman SR, Arora M, Couriel DR, Alousi AM, Pidala J, Abdel-Azim H, Agrawal V, Ahmed I, Al-Homsi AS, Aljurf M, Antin JH, Askar M, Auletta JJ, Bhatt VR, Chee L, Chhabra S, Daly A, DeFilipp Z, Gajewski J, Gale RP, Gergis U, Hematti P, Hildebrandt GC, Hogan WJ, Inamoto Y, Martino R, Majhail NS, Marks DI, Nishihori T, Olsson RF, Pawarode A, Diaz MA, Prestidge T, Rangarajan HG, Ringden O, Saad A, Savani BN, Schoemans H, Seo S, Schultz KR, Solh M, Spitzer T, Storek J, Teshima T, Verdonck LF, Wirk B, Yared JA, Cahn JY, Weisdorf DJ

ここに注目!

HLA適合ドナーが見つからない場合、臍帯血、ハプロ、1座不適合骨髄、1座不適合末梢血幹細胞などの代替ドナーが考えられる。CIBMTRの2,198例という大規模なデータを用いて、これらのドナーソースについて、GVHDなし、かつ再発なし生存(graft-versus-host disease–free relapse-free survival:GRFS)と慢性GVHDなし、かつ再発なし生存(cGVHD–free relapse-free survival:CRFS)が比較された。多変量解析でGRFS、CRFS、OSが最もよかったのはハプロ移植であった。MACに限った解析ではハプロ移植症例が少数すぎるため除外され、残りのソースでは1座不適合末梢血幹細胞臍帯血でATGやalemtuzumab併用なし群は、臍帯血、1座不適合骨髄、1座不適合末梢血幹細胞(ATGやalemtuzumab併用)の群に比べGRFS が不良でCRFSも悪い傾向にあった。ハプロと臍帯血の前向き比較試験(RIC)が行なわれているが、レトロの解析ではハプロの有用性が示されている。

Clonal hematopoiesis in donors and long-term survivors of related allogeneic hematopoietic stem cell transplantation.

Blood. 135(18):1548-1559

Boettcher S, Wilk CM, Singer J, Beier F, Burcklen E, Beisel C, Ventura Ferreira MS, Gourri E, Gassner C, Frey BM, Schanz U, Skoda RC, Ebert BL, Brummendorf TH, Beerenwinkel N, Manz MG

ここに注目!

クローン性の造血(Clonal hematopoiesis:CH)は加齢とともに増加し、血液悪性疾患や心疾患などのリスクとの関連が示唆されている。本研究は、同種造血幹細胞移植というストレス環境がCHにどのように影響するのかを検討している。移植後長期生存者(中央値16年)とそのドナーの42ペアを比較した結果、移植患者の13例、ドナーの10例にCHがみられた。CHは移植患者、ドナーともに加齢と相関して多くみられた。5ペアはドナー由来のCHが移植患者にみられ、そのうち4ペアはドナーに比べ移植患者内でクローンサイズが増大、1ペアはドナー、移植患者ともにMDSを発症した。他の報告と合わせ、ドナーCHがレシピエントに生着しうることが確認され、リンパ球系細胞も例外ではない。ドナーCHが慢性GVHDに影響するとした論文もあり、ドナーCHが移植後長期に与える影響は今後も検討が必要であろう。

Posttransplant Cyclophosphamide After Allogeneic Hematopoietic Cell Transplantation Mitigates the Immune Activation Induced by Previous Nivolumab Therapy

Leukemia. 2020 May 11. doi: 10.1038/s41375-020-0851-8.

Nieto JC, Roldán E, Jiménez I, Fox L, Carabia J, Ortí G, Puigdefàbregas L, Gallur L, Iacoboni G, Raheja P, Pérez A, Bobillo S, Salamero O, Palacio C, Valcárcel D, Crespo M, Bosch F, Barba P

ここに注目!

免疫チェックポイント阻害剤を使った患者への同種造血幹細胞移植は、GVHDが高まるリスクがあると懸念されている。本研究ではそのような患者へのPTCYとFK/mTOR阻害剤によるGVHD予防法の違いの影響を調べている。抗PD-1抗体(ニボルマブ)を使った患者では、移植後56日目も血中にニボルマブが検出された。FK/mTOR阻害剤の群における21日目のT細胞を解析すると、ニボルマブが結合しており、ニボルマブ使用歴のない群よりGVHD頻度が高くT細胞も活性化していた。一方、PTCY群はGVHD頻度が上昇せず、T細胞の状態もニボルマブ使用歴のない群と変わりなかった。以上から抗PD-1抗体を使った患者への同種造血幹細胞移植には、GVHD予防としてPTCY使用が妥当であると考えられた。