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2019年9月の注目論文(Vol. 1)

伊豆津宏二(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科 科長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2019年9月分(Vol. 1)は、伊豆津宏二氏が担当します。

Impact of Concurrent Indolent Lymphoma on the Clinical Outcome of Newly Diagnosed Diffuse Large B-Cell Lymphoma.

Blood. 2019 Jul 26. [Epub ahead of print]

Wang Y, Link BK, Witzig TE, Maurer MJ, Allmer C, King RL, Feldman AL, Habermann TM, Ansell SM, Slager SL, Cerhan JR, Nowakowski GS

ここに注目!

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の患者では、診断時に濾胞性リンパ腫(FL)などのインドレントB細胞リンパ腫の合併を10%程度に認めることがある。インドレントB細胞リンパ腫の成分は、DLBCLと同一の病変に認められることもあれば(composite)、骨髄を含む他の組織に認められることもある(discordant)。このような場合、初発時から組織学的形質転換を来しているとも考えられるが、通常のDLBCLの患者の予後と違うのかはこれまで分かっていなかった。この研究ではリンパ腫患者の前向きコホート研究であるMolecular Epidemiology Resource (MER) of the University of Iowa/Mayo Clinic Lymphoma Specialized Program of Research Excellence (SPORE)のデータベースを用いて、DLBCLの診断時に背景にインドレントB細胞リンパ腫を合併している患者が13%いること、そのうち半数以上がFLを合併していることが示された。背景にFLが合併している患者の予後は胚中心B細胞型のDLBCLのみの患者と同等であった。また、このようなインドレントB細胞リンパ腫合併DLBCL患者では、DLBCLとしての再発もインドレントB細胞リンパ腫としての再発もあることが分かった。実地診療でこのような患者に対する診療を考える上で有用なデータとなると思われる。

Early progression after bendamustine-rituximab is associated with high risk of transformation in advanced stage follicular lymphoma.

Blood. 134(9):761-764

Freeman CL, Kridel R, Moccia AA, Savage KJ, Villa DR, Scott DW, Gerrie AS, Ferguson D, Cafferty F, Slack GW, Farinha P, Skinnider B, Connors JM, Sehn LH

ここに注目!

治療を要する進行期濾胞性リンパ腫(FL)の患者で、診断後(または治療開始後)早期に進行を来した患者は予後不良であることがよく知られている。初回治療としてR-CHOP療法を受けた患者の約20%は、診断後24カ月以内に進行を来たし(Progression of disease within 24 months; POD24)、POD24の患者では5年生存割合が50%(非POD24の患者では90%)と、予後不良である。この後方視的研究では、最近、FLの初回治療として多く使われるようになったベンダムスチン・リツキシマブ(BR)併用療法後のPOD24の割合が13%で、POD24の患者の2年生存割合が38%と不良であることが示された。また、POD24の患者の76%は組織学的形質転換を来していた。BR療法後のPOD24の患者に対する治療選択において有用なデータと思われる。

Venetoclax and Obinutuzumab in Patients with CLL and Coexisting Conditions.

N Engl J Med. 380(23):2225-2236

Fischer K, Al-Sawaf O, Bahlo J, Fink AM, Tandon M, Dixon M, Robrecht S, Warburton S, Humphrey K, Samoylova O, Liberati AM, Pinilla-Ibarz J, Opat S, Sivcheva L, Le Dû K, Fogliatto LM, Niemann CU, Weinkove R, Robinson S, Kipps TJ, Boettcher S, Tausch E, Humerickhouse R, Eichhorst B, Wendtner CM, Langerak AW, Kreuzer KA, Ritgen M, Goede V, Stilgenbauer S, Mobasher M, Hallek M

ここに注目!

BCL2阻害薬ベネトクラクスは、慢性リンパ性白血病(CLL)に対する注目の新規治療薬である。まずは再発・難治例での有用性が確かめられてきたが、この報告は未治療例を対象としたランダム化第Ⅲ相試験の結果である。対象は、併存症・臓器障害の多い(主に高齢者の)未治療CLL患者で、ベネトクラクスと抗CD20抗体オビヌツズマブの併用療法(Ven+Obi)と、海外で承認されているクロラムブシル・オビヌズマブ併用療法が比較された。主要評価項目の無増悪生存期間はVen+Obi併用療法が優れており、この結果を受けて未治療CLLに対するVen+Obi併用療法は米国FDAにより承認された。同様の対象に対してイブルチニブ単剤療法が承認されているが、Ven+Obi併用療法とイブルチニブ単剤療法、さらにはベネトクラクス・イブルチニブ併用療法との有用性の比較は今後の課題だろう。なお、Ven+Obi併用療法は期間限定治療で、本試験ではベネトクラクスの投与期間は28日×12サイクルであった。また、微小残存病変の陰性化が多くの患者でみられている。