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2019年11月の注目論文(Vol. 1)

前田嘉信(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 血液・腫瘍・呼吸器内科学 教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2019年11月分(Vol. 1)は、前田嘉信氏が担当します。

Fecal microbiota transplantation before or after allogeneic hematopoietic transplantation in patients with hematological malignancies carrying multidrug-resistance bacteria.

Haematologica. 104(8):1682-1688

Battipaglia G, Malard F, Rubio MT, Ruggeri A, Mamez AC, Brissot E, Giannotti F, Dulery R, Joly AC, Baylatry MT, Kossmann MJ, Tankovic J, Beaugerie L, Sokol H, Mohty M

ここに注目!

糞便移植は腸管細菌叢の正常化を通して腸管バリアーの保全と免疫抑制、抗炎症作用をもたらし、その結果GVHDの軽減につながると考えられている。本研究は同種造血幹細胞移植の際に問題となる多剤耐性菌の克服を目的として糞便移植を実施した。CPE(カルバペネマーゼ産生菌)、VRE感染の10例に対し、健康な血縁、非血縁ドナーから糞便移植を施行した。造血幹細胞移植前に糞便移植を行なった4例中4例、また移植後に糞便移植を行なった6例中3例において、脱コロナイゼーションが達成された。副作用は軽度であり、1例が腸管のGVHD(grade Ⅲ)を発症した。移植の有無に関わらず、治療の障害となる多剤耐性菌の克服を目的として糞便移植が普及するかもしれない。

Human Herpesvirus 6B and Lower Respiratory Tract Disease After Hematopoietic Cell Transplantation.

J Clin Oncol. 37(29):2670-2681

Hill JA, Vande Vusse LK, Xie H, Chung EL, Yeung CCS, Seo S, Stevens-Ayers T, Fisher CE, Huang ML, Stewart FM, Jerome KR, Zerr DM, Corey L, Leisenring WM, Boeckh M

ここに注目!

HHV-6Bはほとんどすべての成人に潜伏感染しており、造血幹細胞移植後に再活性化し、時に脳炎などで臨床上の問題となる。免疫抑制状態の下部気道疾患患者の気管支洗浄液BALFにHHV-6Bがよく検出されるが、その臨床的意義は不明である。本研究では、同種造血幹細胞移植後に下部気道疾患を呈した患者におけるBAL中のHHV-6Bの意義を検証している。553例の検体から147例(27%)にHHV-6Bが検出され、陽性群は全死亡(aHR, 2.18; 95%CI 1.41-3.39)と呼吸不全による死亡(aHR, 2.50; 95%CI 1.56-4.01)のリスクが高いことが明らかとなった。脳炎以外に移植後の治療関連死亡に繋がる可能性が指摘された。3例の患者で肺間質にHHV-6BのRNAが証明された。さらに、抗ウイルス剤でBAL中のHHV-6B DNA量が低下することも同時に明らかにされ、今後は、抗ウイルス剤の介入で死亡率が低下するかどうかを検討する臨床試験が望まれる。

Allogeneic peripheral blood stem cell transplantation with anti-thymocyte globulin versus allogeneic bone marrow transplantation without anti-thymocyte globulin.

Haematologica. 2019 Aug 14. [Epub ahead of print]

Baron F, Galimard JE, Labopin M, Yakoub-Agha I, Niittyvuopio R, Kröger N, Griskevicius L, Wu D, Forcade E, Richard C, Aljurf M, Helbig G, Labussière-Wallet H, Mohty M, Nagler A

ここに注目!

EBMTから多数例を用いた後方視研究の解析結果が報告されている。ATG併用なしのPBSCTでは慢性GVHDが多いが、今回は、急性骨髄性白血病に対して骨髄破壊的前治療を用いた移植において、ATG併用ありのPBSCTとATG併用なしのBMTを比較している。HLA一致血縁者間移植においては、重度急性GVHDおよび再発なし(GRFS)や全生存率(OS)には差がなかった。しかし、ATG併用ありのPBSCTでは慢性GVHDの頻度が少なかった。HLA一致非血縁者間移植においては、ATG併用のPBSCTでGRFS、OSや慢性GVHDの頻度が少なかった。これまでの他の報告と同様、ATG併用は慢性GVHDのリスクを低下させる一方で再発のリスクを上昇させていない。