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2019年6月の注目論文

柴山浩彦(大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学 准教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2019年6月分は、柴山浩彦氏が担当します。

Anti-BCMA CAR T-Cell Therapy bb2121 in Relapsed or Refractory Multiple Myeloma.

N Engl J Med. 380(18):1726-1737

Raje N, Berdeja J, Lin Y, Siegel D, Jagannath S, Madduri D, Liedtke M, Rosenblatt J, Maus MV, Turka A, Lam LP, Morgan RA, Friedman K, Massaro M, Wang J, Russotti G, Yang Z, Campbell T, Hege K, Petrocca F, Quigley MT, Munshi N, Kochenderfer JN

ここに注目!

日本でもCD19に対するCART細胞治療が、再発・難治のALLとDLBCLに対し、保険適用となった。再発・難治MMに対しても、BCMAに対するCART細胞治療(bb2121)が開発されている。本論文は、第Ⅰ相試験の結果であり、対象となった患者は、PIとIMiDを含む3ライン以上の前治療歴があり、ダブルレフラクトリーの患者も含まれていた。主要評価項目の安全性については、G3以上の好中球減少(85%)、白血球減少(58%)、貧血(45%)、血小板減少(45%)を認めた。また、76%の患者にCRSがみられ、G1-2が70%、G3が6%であった。神経障害はG1-2が39%、G4が1例(3%)であった。G3のCRSは、他のBCMAに対するCART細胞治療と比べ少なかった。有効性については、全奏効率が85%、完全寛解が45%であり、輸注細胞数が150×106以上であれば効果がみられている。PFSの中央値は11.8カ月であり、対象が再発・難治MMではあるが、本治療法は、短期の有効性は認められるものの長期の寛解を得るのは難しいと思われた。

Pomalidomide, bortezomib, and dexamethasone for patients with relapsed or refractory multiple myeloma previously treated with lenalidomide (OPTIMISMM): a randomised, open-label, phase 3 trial.

Lancet Oncol. 20(6):781-794

Richardson PG, Oriol A, Beksac M, Liberati AM, Galli M, Schjesvold F, Lindsay J, Weisel K, White D, Facon T, San Miguel J, Sunami K, O'Gorman P, Sonneveld P, Robak P, Semochkin S, Schey S, Yu X, Doerr T, Bensmaine A, Biyukov T, Peluso T, Zaki M, Anderson K, Dimopoulos M; OPTIMISMM trial investigators

ここに注目!

最近では、MM患者の初回治療に、レナリドミド(R)が用いられることが多くなり、セカンドラインの治療を選ぶ際に、Rを含まない治療法は限られる。また、再発・難治MM患者に対するRを含む治療法のKRd、IRd、ERd、DRdなどは、開発時の臨床試験において、比較対照の標準治療がRdであったため、前治療にRが投与されている患者やR抵抗性の患者は含まれておらず、これらの3剤の組み合わせがR抵抗性の患者にどの程度有効かは不明である。本試験は、前治療にRが使用された(うち70%はR抵抗性)患者を対象に、ポマリドミド(P)、ボルテゾミブ(V)、デキサメタゾン(d)併用とVd療法を比較した第Ⅲ相試験である。主要評価項目のPFSは、11.2カ月と7.1カ月で有意にPVd療法が優れていた。副作用では、PVd療法が、好中球減少、FN、感染症の頻度が多かった。同じIMiDであるが、R抵抗性になってもPが有効であることが臨床的に示され、PVd療法がR抵抗性のMM患者に対する治療オプションとなることが示された。

Efficacy of first-line treatments for multiple myeloma patients not eligible for stem cell transplantation: a network meta-analysis.

Haematologica. 104(5):1026-1035

Blommestein HM, van Beurden-Tan CHY, Franken MG, Uyl-de Groot CA, Sonneveld P, Zweegman S

ここに注目!

MMに対し、現在、PI3剤、IMiD3剤、抗体薬2剤、HDACi1剤が新規薬剤として使用可能であり、さらに、メルファラン(M)などの従来の抗癌剤を組み合わせると、それらのコンビネーションの種類は数十になる。どの組み合わせが有効かを検証するのに、すべての組み合わせをHead to headで試験することは不可能である。そこで登場したのが、複数の試験結果を用いたネットワークメタ解析という統計手法である。本論文では、移植非適応の初発MM患者に対する24試験を解析し、21通りの治療法の優劣を検討している。その結果、PFSでは1位がダラツムマブ(D)、ボルテゾミブ(V)、M、プレドニゾロン(P)(DVMP療法)、2位がVMP、サリドマイド(T)-VT(VMPT-VT療法)、3位がV、レナリドミド(R)、デキサメタゾン(d)(VRd療法)であった。各試験では、試験が行なわれた時期、患者背景や腫瘍細胞の特徴が異なっており、この結果を鵜呑みにすることはできないが、一つの参考データにはなると思われる。実臨床では、さらに様々なファクターを考慮して、目の前の患者にとって最良の治療法を選択することとなるのは言うまでもない。