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2019年7月の注目論文(Vol. 1)

張替秀郎(東北大学大学院 医学系研究科 血液・免疫病学分野 教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2019年7月分(Vol. 1)は、張替秀郎氏が担当します。

Long-term ex vivo haematopoietic-stem-cell expansion allows nonconditioned transplantation.

Nature. 2019 May 29. [Epub ahead of print]

Wilkinson AC, Ishida R, Kikuchi M, Sudo K, Morita M, Crisostomo RV, Yamamoto R, Loh KM, Nakamura Y, Watanabe M, Nakauchi H, Yamazaki S

ここに注目!

体外増幅した造血幹細胞で前処置なしの移植が可能である

これまで、安定した造血幹細胞の増幅は体外環境下では得られていなかったが、本研究では、体外環境で長期間マウスの機能的造血幹細胞を増幅できる培養システムの開発に成功した。まず、高濃度thrombopoietin、低濃度stem cell factor、fibronectinコートの培養プレート使用という環境下で、造血幹細胞の自己複製能が維持されることを見出した。さらに、アルブミンの代わりにポリビニルアルコールを使用することで、より効率的な造血幹細胞の増幅に成功した。このシステムにおける1カ月以上の培養で、機能的造血幹細胞を236~899倍に増幅することが出来た。また、放射線照射などの前処置を行なわずに、このシステムで増幅した造血幹細胞50個をマウスに移植したところ、確実な生着を確認できた。今回得られた知見は、より安全でしかも安価な造血幹細胞の大量培養法の実現につながるものであり、基礎の幹細胞生物学においても臨床血液学においても重要な意味をもつと考えられる。

Daratumumab plus Lenalidomide and Dexamethasone for Untreated Myeloma.

N Engl J Med. 380(22):2104-2115

Facon T, Kumar S, Plesner T, Orlowski RZ, Moreau P, Bahlis N, Basu S, Nahi H, Hulin C, Quach H, Goldschmidt H, O'Dwyer M, Perrot A, Venner CP, Weisel K, Mace JR, Raje N, Attal M, Tiab M, Macro M, Frenzel L, Leleu X, Ahmadi T, Chiu C, Wang J, Van Rampelbergh R, Uhlar CM, Kobos R, Qi M, Usmani SZ; MAIA Trial Investigators; the MAIA Trial Investigators

ここに注目!

未治療多発性骨髄腫に対するダラツムマブ・レナリドミド・デキサメタゾン療法

レナリドミド・デキサメタゾン療法は自家造血幹細胞移植非適応の初発多発性骨髄腫に対する標準治療である。本研究は本治療にダラツムマブを上乗せした際の有効性を検証する臨床試験である。対象は737名の移植非適応初発多発性骨髄腫で、ダラツムマブ併用群と非併用群にランダムに割り付けられた。30カ月時点での病勢進行なしの生存率はダラツムマブ併用群で70.6%、非併用群で55.6%(P<0.001)であった。CR以上を達成した比率はダラツムマブ併用群で47.6%、非併用群で24.9%であった(P<0.001)。グレード3以上の好中球減少、リンパ球減少、肺炎の出現率はいずれもダラツムマブ併用群で高率であった。治療効果はダラツムマブ併用群で良好であったが、染色体ハイリスク群での有効性は標準リスク群ほど顕著ではなく、すべての対象症例にダラツムマブ併用療法を実施すべきかさらなる検討が必要と思われる。

Tagraxofusp in Blastic Plasmacytoid Dendritic-Cell Neoplasm.

N Engl J Med. 380(17):1628-1637

Pemmaraju N, Lane AA, Sweet KL, Stein AS, Vasu S, Blum W, Rizzieri DA, Wang ES, Duvic M, Sloan JM, Spence S, Shemesh S, Brooks CL, Balser J, Bergstein I, Lancet JE, Kantarjian HM, Konopleva M

ここに注目!

芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍に対するTagraxofusp治療

芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(Blastic plasmacytoid dendritic-cell neoplasm : BPDCN)は予後不良の造血器腫瘍である。腫瘍細胞はIL3受容体αサブユニット(IL3RAもしくはCD123)を高発現していることが知られている。Tagraxofusp(SL-401)はヒトIL3とジフテリアトキシンを結合させたCD123を標的としたサイトトキシン薬である。本研究は、未治療もしくは再発BPDCNに対するTagraxofuspの有効性を検証した臨床試験である。対象は47名のBPDCN患者であり、Tagraxofuspをd1からd5まで3週間サイクルで投与するプロトコールである。47名中32名が未治療、15名が既治療であった。未治療でTagraxofusp 12μg/kgを投与された29名の全奏効率は90%で、このうち45%が移植を受けた。24カ月時点の生存率は52%であった。既治療15名の全奏効率は67%、平均生存期間は8.5カ月であった。有害事象として、肝機能障害、低アルブミン血症、血小板減少のほか、19%の患者でcapillary leak syndromeが認められた。有害事象が少なからず認められるが、難治性疾患であるBPDCNに対する新規治療薬として期待される。