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2019年2月の注目論文(Vol. 2)

張替秀郎(東北大学大学院 医学系研究科 血液・免疫病学分野 教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2019年2月分(Vol. 2)は、張替秀郎氏が担当します。

Venetoclax with azacitidine disrupts energy metabolism and targets leukemia stem cells in patients with acute myeloid leukemia.

Nat Med. 24(12):1859-1866

Pollyea DA, Stevens BM, Jones CL, Winters A, Pei S, Minhajuddin M, D'Alessandro A, Culp-Hill R, Riemondy KA, Gillen AE, Hesselberth JR, Abbott D, Schatz D, Gutman JA, Purev E, Smith C, Jordan CT

ここに注目!

Venetoclaxとazacitidineは急性骨髄性白血病の白血病幹細胞のエネルギー代謝を阻害する

急性骨髄性白血病(AML)においては白血病幹細胞(LSC)の残存が再発につながる。LSCにおいては抗アポトーシス遺伝子であるBCL-2(B cell lymphoma 2)が高発現しており、BCL-2阻害薬はAMLの有用な治療法である可能性が示唆されている。

本研究では、BCL-2阻害薬であるベネトクラクスとメチル化阻害薬であるアザシチジンの併用療法がどのような機序でLSCを排除しているのか解析した。本治療を受けた患者から得られたLSCを解析したところ、電子伝達系複合体Ⅱ(ETC complex Ⅱ)が阻害されており、この阻害はコハク酸デヒドロゲナーゼ(SDHA)のグルタチオン化の低下によって起こっていることが明らかとなった。このような変化はOXPHOSを抑制するものであり、この作用により本治療はLSCを効率的かつ選択的に標的としていると考えられた。今回の知見は、LSC選択的にエネルギー代謝を阻害させることが、難治性AMLに対して臨床的に有望な治療戦略であることを示した初めての結果である。

Venetoclax combined with decitabine or azacitidine in treatment-naive, elderly patients with acute myeloid leukemia.

Blood. 133(1):7-17

DiNardo CD, Pratz K, Pullarkat V, Jonas BA, Arellano M, Becker PS, Frankfurt O, Konopleva M, Wei AH, Kantarjian HM, Xu T, Hong WJ, Chyla B, Potluri J, Pollyea DA, Letai A

ここに注目!

Venetoclaxとazacitidineもしくはdecitabineの併用は初発高齢者AMLに有効である

高齢者の急性骨髄性白血病(AML)の標準化学療法への反応は不良である。急性骨髄性白血病細胞の生存や治療抵抗性にBCL-2の過剰発現が関与していることが示唆されている。本研究では、デシタビンもしくはアザシチジンにBCL-2阻害薬であるベネトクラクスを併用した治療法の有効性と安全性を検証した。対象は65歳以上の初発AML患者で、400mg、800mg、1200mg/日のdose escalationコホートと400mg、800mg/日のexpansionコホートからなる試験である。400mg/日のベネトクラクスを併用したコホートにおけるCR + CRi率は73%と良好であった。全対象症例のCR + CRi期間中央値は11.3カ月、全生存期間中央値は17.5カ月であった。この結果から、デシタビンもしくはアザシチジンにベネトクラクスを併用した治療法は高齢者AMLに対する治療として安全で有効であることが示された。

Wiskott-Aldrich syndrome protein (WASP) is a tumor suppressor in T cell lymphoma.

Nat Med. 25(1):119-129

Agarwal R, Chan YC, Tam CS, Hunter T, Vassiliadis D, Teh CE, Thijssen R, Yeh P, Wong SQ, Ftouni S, Lam EYN, Anderson MA, Pott C, Gilan O, Bell CC, Knezevic K, Blombery P, Rayeroux K, Zordan A, Li J, Huang DCS, Wall M, et al.

ここに注目!

Wiskott-Aldrich syndrome protein (WASP)はT細胞リンパ腫におけるがん抑制遺伝子である

WASPおよびWASP-interacting-protein(WIP)は、T細胞抗原受容体(TCR)シグナルを制御する因子だが、リンパ腫での役割は明らかとなっていない。筆者らはWASPとWIPの発現が他のT細胞リンパ腫と比較して未分化大細胞リンパ腫(ALCL)でしばしば低いことを発見し、次にAnaplastic lymphoma kinase陽性(ALK+)ALCLにおいて、WASPおよびWIPの発現が、下流の調節因子であるSTAT3およびC/EBP-βを経由したALKの発がん活性によって制御されていることを示した。ALK+ ALCLの増殖はWASP欠損マウスおよびWIP欠損マウスによって促進された。WASPの非存在下では、活性型GTPに結合したCDC42は増加し、CDC42のヘテロ欠損によってリンパ腫の増殖は十分に抑制された。WASP欠損リンパ腫ではMAPK経路の活性化が見られ、治療標的となり得る可能性が示唆された。