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2019年4月の注目論文(Vol. 2)

木崎昌弘(埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2019年4月分(Vol. 2)は、木崎昌弘氏が担当します。

Azacitidine maintenance after intensive chemotherapy improves DFS in older AML patients.

Blood. 133(13):1457-1464

Huls G, Chitu DA, Havelange V, Jongen-Lavrencic M, van de Loosdrecht AA, Biemond BJ, Sinnige H, Hodossy B, Graux C, Kooy RVM, de Weerdt O, Breems D, Klein S, Kuball J, Deeren D, Terpstra W, Vekemans MC, Ossenkoppele GJ, Vellenga E, Löwenberg B; Dutch-Belgian Hemato-Oncology Cooperative Group (HOVON)

ここに注目!

高齢者AMLや高リスクMDSの治療は悩ましい。本論文は、60歳以上のAMLおよびMDSを対象に、化学療法にて寛解導入した後にアザシチジン(Aza)での維持療法が有効かを検討した無作為化第Ⅲ相試験(HOVON97)の最終解析結果である。寛解導入された高齢者AMLにおいてAzaによる維持療法(50mg/m2、5日間、4週間毎)は無治療群に比し、DFSを有意に延長した(15.9 mo vs. 10.3 mo; p=.04)。ただし、OSは変わらなかった。これまで、寛解導入に成功した高齢者AMLの再発を防ぐために少量シタラビンやGOを用いることが多いが、その有効性は明らかでなかった。今回の結果は、このような状態にAzaが有効であることを示した初めての前向き試験ということに意義がある。日常診療でも、少量シタラビンやCAG療法の後にAzaを使用することは間々あるが、臨床的な感覚からも妥当な結論かと思われる。

GM-CSF inhibition reduces cytokine release syndrome and neuroinflammation but enhances CAR-T cell function in xenografts.

Blood. 133(7):697-709

Rosalie M. Sterner, Reona Sakemura, Michelle J. Cox, Nan Yang, Roman H. Khadka, Cynthia L. Forsman, Michael J. Hansen, Fang Jin, Katayoun Ayasoufi, Mehrdad Hefazi, Kendall J. Schick, Denise K. Walters, Omar Ahmed, Dale Chappell, Tarek Sahmoud, Cameron Durrant, Wendy K. Nevala, Mrinal M. Patnaik, Larry R. Pease, Karen E. Hedin, Neil E. Kay, Aaron J. Johnson and Saad S. Kenderian

ここに注目!

「チサゲンレクルユーセル(商品名:キムリア)」が承認されたこともあり、造血器腫瘍に対するCAR-T細胞療法が現実のものとなり、その興味がさらに高まっている。しかしながら、その副作用としてのサイトカイン放出症候群(CRS)と中枢神経系への毒性が問題となっている。CRSに対しては抗ヒトIL-6Rモノクローナル抗体トシリズマブの効果が認められ承認されているが、中枢神経毒性に対しての効果はない。本論文は、GM-CSF中和抗体lenzilumabがCD19に対するCART19の機能を阻害しないばかりか、抗腫瘍活性を増強するとともに、CD19陽性ALL細胞を移植したマウスモデルにおいて、CRSおよび中枢神経毒性を予防することを示した。GM-CSF中和抗体は中枢神経への骨髄系細胞およびT細胞の浸潤を抑制し、CRISP/Cas19システムを用いてGM-CSFをノックアウトしたCAR-T細胞を用いることで、その作用機序をエレガントに証明した。今後、CAR-T細胞の臨床応用がさらに盛んになると思われるが、示唆に富む重要な論文かと思われる。

Genomic landscape and clonal evolution of acute myeloid leukemia with t(8;21): an international study on 331 patients.

Blood. 133(10):1140-1151

Christen F, Hoyer K, Yoshida K, Hou HA, Waldhueter N, Heuser M, Hills RK, Chan W, Hablesreiter R, Blau O, Ochi Y, Klement P, Chou WC, Blau IW, Tang JL, Zemojtel T, Shiraishi Y, Shiozawa Y, Thol F, Ganser A, Löwenberg B, Linch DC, Bullinger L, Valk PJM, Tien HF, Gale RE, Ogawa S, Damm F

ここに注目!

t(8;21)を有するAMLは予後良好とされるが、ヘテロな集団であり約40%の症例が再発する。本論文は、331例という大規模なコホートを用いて、t(8;21)を有するAMLをNGSの技術を用いて詳細なゲノム解析を行なった初めての報告である。t(8;21)に起因するRUNX1-RUNX1T1融合遺伝子の他にほとんどの症例が何らかの遺伝子変異を有していた。特にRAS/RTKシグナルに関係する遺伝子変異を63%に認め、中でもJAK2KITFLT3-ITD変異を有する症例の予後が悪かった。経時的に検討した結果では、再発の度に新たな遺伝子変異が生じクローン進化することが明らかになった。したがって、将来的にはt(8;21)を伴うAMLに対しては、NGSによるゲノム解析により層別化し、再発時には変異に見合ったキナーゼ阻害薬を用いるなどの治療戦略を立てることが必要であろうという結論である。ゲノム解析には京都大学の小川先生のグループが関与しており、重要な知見かと思われるが、我が国においてNGSが実診療に応用されるのはまだまだ先のようである。