2025年6月の注目論文（Vol. 1）
柴山浩彦（国立病院機構 大阪医療センター 血液内科科長／輸血療法部長）
2025.06.12
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2025年6月分（Vol. 1）は、柴山浩彦氏が担当します。
J Clin Oncol. 2025 Feb 18:JCO2401730. doi: 10.1200/JCO-24-01730. Online ahead of print.
Hansen DK, Peres LC, Dima D, Richards A, Shune L, Afrough A, Midha S, Dhakal B, Kocoglu MH, Atrash S, Ferreri C, Castaneda O, Davis JA, Bhurtel E, McGuirk J, Wagner C, Bansal R, Costello P, Smith K, Lieberman-Cribbin A, De Avila G, Purvey S, Hosoya H, Mikkilineni L, Oswald LB, Kaur G, Pasvolsky O, Gaballa M, Herr MM, Forsberg P, Janakiram M, Htut M, Asoori Maringanti S, Kalariya N, Hashmi H, Reshef R, Sborov DW, Nadeem O, Anwer F, Khouri J, Raza S, Atanackovic D, Alsina M, Freeman CL, Locke FL, Voorhees P, Anderson LD Jr, Richard S, Martin T, Lin Y, Patel KK, Sidana S; US Multiple Myeloma Immunotherapy Consortium.
ここに注目！
現在、日本でBCMAを標的としたCAR-T細胞治療はIde-CelとCilta-Celが承認されているが、日常診療ではIde-Celのみ使用できる状況である。海外では、どちらも使用できる状況であり、本論文では、日常診療下でのIde-CelとCilta-Celの有効性、安全性を比較した結果が報告されている。米国の19施設で2022年12月31日までにリンパ球採取が行われた641例（Ide:386、Cilta:255）のうち、586例（Ide:350、Cilta:236）にCAR-T細胞の輸注が実施された。解析を行った患者背景には差を認めなかった。Cilta-Celの方がIde-Celと比較し有効性（CR以上の奏効率、PFS、OS）が有意に優れていたが、副作用（グレード3以上のサイトカイン放出症候群（CRS）、感染症、二次性悪性腫瘍、遅延性の神経障害）の頻度も有意に多かった。ただし、免疫細胞関連神経毒性症候群（ICANS）、全グレードのCRS、重度の骨髄抑制、非再発死亡の割合は両治療に差を認めなかった。以上の結果をみると、日本でもCilta-Celの日常使用が早期に可能となることが期待される。