2025年4月の注目論文(Vol. 2)
前田嘉信(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 血液・腫瘍・呼吸器内科学 教授)
2025.04.24
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2025年4月分(Vol. 2)は、前田嘉信氏が担当します。
Fratricide-resistant CD7-CAR T cells in T-ALL
Nat Med. 2024 Dec;30(12):3687-3696. doi: 10.1038/s41591-024-03228-8. Epub 2024 Sep 3.
Bernice L Z Oh, Noriko Shimasaki, Elaine Coustan-Smith, Esther Chan, Limei Poon, Shawn H R Lee, Frances Yeap, Lip Kun Tan, Louis Y A Chai, Nina Le Bert, Nicole Tan, Antonio Bertoletti, Siew Peng Chen, Francesca Del Bufalo, Marco Becilli, Franco Locatelli, Allen E J Yeoh, Dario Campana
ここに注目!
B細胞系に比べT細胞系悪性腫瘍に対するCAR-T療法は、あまり上手くいっていないが、その主な原因として次のことが挙げられる。CD5やCD7は正常T細胞にも発現しているため、CAR-T療法後にT細胞性免疫不全になるリスクがあること、また、CAR-T細胞間で同士討ちする可能性があることである。同士討ちを回避するためには、例えばCD7をノックアウトする方法や細胞内に局在化し表面に発現させない方法などがある。本研究では、後者のCD7の発現を抑制する方法でCD7 CAR-Tを作成し、17人の再発または難治性T-ALL患者に対し臨床試験を実施した。その結果、17人中16人が1カ月以内にMRD陰性の完全寛解に到達した。そして、9人の同種移植実施患者を含む11人に中央値15カ月の追跡期間中、再発がみられていない。また、CD19 CAR-Tと比べると低い割合ではあるが、T細胞、NK細胞ともに回復がみられ、それらの細胞はCD7が陰性であった。T細胞系悪性腫瘍に対するCAR-T療法の今後に期待を持たせる報告である。