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この論文に注目!Focus On

2024年9月の注目論文(Vol. 1)

坂田(柳元)麻実子(筑波大学 医学医療系 血液内科 教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2024年9月分(Vol. 1)は、坂田(柳元)麻実子氏が担当します。

A systematic review and meta-analysis of nonrelapse mortality after CAR T cell therapy

Nat Med. 2024 Jul 8. doi: 10.1038/s41591-024-03084-6. Online ahead of print.

David M Cordas Dos Santos, Tobias Tix, Roni Shouval, Anat Gafter-Gvili, Jean-Baptiste Alberge, Edward R Scheffer Cliff, Sebastian Theurich, Michael von Bergwelt-Baildon, Irene M Ghobrial, Marion Subklewe, Miguel-Angel Perales, Kai Rejeski

ここに注目!

キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法は、造血器腫瘍に対する治療戦略をダイナミックに変えつつある。本研究では、2024年3月までに報告されたリンパ腫あるいは多発性骨髄腫に対するCAR-T細胞療法後の非再発死亡(non relapse mortality, NRM)について、システマティックレビューおよびメタアナリシスを行なった。死因と死亡数を抽出した後、ランダム効果モデルを用いてNRMの推定値を解析した。臨床試験18件およびリアルワールドデータ28件に登録された7,604人のデータが特定され、NRM推定値はマントル細胞リンパ腫患者で最も高く(10.6%)、次いで多発性骨髄腫(8.0%)、大細胞型B細胞リンパ腫(6.1%)、低悪性度リンパ腫(5.7%)の順であった。なお、CAR-T細胞療法の製剤の種類によるNRMの違いについても報告されている。

報告された574件のNRMのうち、半数以上が感染症(292例/574例、50.9%)に起因し、次いで他の悪性腫瘍(7.8%)および心血管/呼吸器イベント(7.3%)が続いた。感染症のうち病原菌が特定されたのは103例/292例であり、COVID-19が最も多く(55例/103例、53.4%)、細菌感染(21.4%)、真菌感染(19.4%)、COVID-19以外のウイルス感染(4.8%)がこれに続いた。リアルワールドデータでは臨床試験より、感染症によるNRMの頻度は高かった(64.7% [217例/337例]vs 59.1%[75例/127例])。他の悪性腫瘍のなかでは、骨髄異形成症候群あるいは急性骨髄性白血病が最多(15例/45例、33.3%)であった。一方、CAR-T細胞特異的な副作用である免疫関連の合併症(免疫細胞関連神経毒性症候群(ICANS)/神経毒性、サイトカイン放出症候群、血球貪食性リンパ組織球症)は、NRMのわずか11.5%であった。CAR-T細胞療法のマネジメントに留意するポイントを考える上で重要な研究である。