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この論文に注目!Focus On

2024年10月の注目論文(Vol. 2)

宮﨑泰司(長崎大学 原爆後障害医療研究所 所長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2024年10月分(Vol. 2)は、宮﨑泰司氏が担当します。

Axatilimab in Recurrent or Refractory Chronic Graft-versus-Host Disease

N Engl J Med. 2024 Sep 19;391(11):1002-1014.

Wolff D, Cutler C, Lee SJ, Pusic I, Bittencourt H, White J, Hamadani M, Arai S, Salhotra A, Perez-Simon JA, Alousi A, Choe H, Kwon M, Bermúdez A, Kim I, Socié G, Chhabra S, Radojcic V, O'Toole T, Tian C, Ordentlich P, DeFilipp Z, Kitko CL; AGAVE-201 Investigators.

ここに注目!

同種造血幹細胞移植の合併症の一つである慢性GVHDには標準治療であるステロイドへの抵抗例や依存例も多く、いまだ十分な治療が確立されていない。慢性GVHDの病態形成にはマクロファージが重要な役割を担っているが、この研究ではマクロファージに発現するCSF1(colony-stimulating factor 1)受容体(CSF1R)に対するIgG4サブクラスのヒト型モノクローナル抗体axatilimab(Axa)の、慢性GVHDへの有効性を第Ⅱ相試験として検討している。CSF1Rはマクロファージや単球に発現し、CSF1およびIL-34と結合して組織マクロファージの増殖や機能を調節しているが、Axaはこれに結合しリガンドによるCSF1Rシグナルを阻害する。

この試験では治療抵抗性慢性GVHD患者241人が登録され3群に割り付けられた(0.3mg/kg-2週毎:80人、1mg/kg-2週毎:81人、3mg/kg-4週毎:80人)。完全および部分寛解割合は、0.3mg群74%(95% 信頼区間 [CI]:63-83)、1mg群67%(95% CI:55-77)、3mg群50%(95% CI:39-61)で、30%を超えるという主要評価項目を3群とも達成した。修正Leeスケールで5ポイント以上の減少がそれぞれの群で60%、69%、41%にみられた。有害事象はCSF1R阻害に関連する用量依存性の一過性の臨床検査値異常が多く、投与中止に至った有害事象は、0.3mg群6%、1mg群22%、3mg群18%であった。

この結果は、CSF1Rシグナルという新たな治療標的の阻害が慢性GVHDに有効であることを示しており、病態として重要な組織線維化の改善を含め、Axaは再発・難治の慢性GVHDの新たな治療薬として期待される。