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2023年2月の注目論文(Vol. 2)

柴山浩彦(国立病院機構 大阪医療センター 血液内科 科長)

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血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2023年2月分(Vol. 2)は、柴山浩彦氏が担当します。

Talquetamab, a T-Cell-Redirecting GPRC5D Bispecific Antibody for Multiple Myeloma

N Engl J Med. 2022 Dec 15;387(24):2232-2244.

Chari A, Minnema MC, Berdeja JG, Oriol A, van de Donk NWCJ, Rodríguez-Otero P, Askari E, Mateos MV, Costa LJ, Caers J, Verona R, Girgis S, Yang S, Goldsmith RB, Yao X, Pillarisetti K, Hilder BW, Russell J, Goldberg JD, Krishnan A.

ここに注目!

G protein-coupled receptor, family C, group 5, member D(GPRC5D)は、形質細胞と皮膚の角化組織のみに発現がみられる蛋白分子であり、高リスク骨髄腫のマーカーにもなっている。今回GPRC5DとCD3に対する二重抗体薬であるTalquetamabの第Ⅰ相試験が実施された。対象となったMM患者は、前治療の中央値が6ラインで、プロテアソーム阻害薬(PI)、免疫調節薬(IMiD)、抗CD38抗体に抵抗性を示すトリプルクラスレフラクトリー例が約80%含まれる再発・難治例であった。試験は、Talquetamab 0.5~180μg/kgの静脈内投与(iv)を週1回または隔週、5~1,600μg/kgの皮下投与(sc)を週1回、隔週、月1回の群に分けられ実施された。232例(iv:102、sc:130)が試験に参加し、第Ⅱ相への推奨用法・用量が、405μg/kgの週1回sc(30例)と800μg/kgの隔週sc(44例)に決定された。主な副作用は、約80%にサイトカイン放出症候群(CRS)、約70%に皮膚障害、約60%に味覚障害がみられたが、本薬剤の副作用はこれまでのところ想定内のものであり、1件を除きすべてがグレード1-2であった。奏効率は、それぞれの推奨投与で70%と64%であり、うち最良部分奏効(VGPR)以上は57%と52%であった。今後、第Ⅲ相試験へと開発が進んでいく予定であるが、新たな分子を標的とした新規治療薬として大いに期待される。