血液専門医と医療関係者のための情報サイト「ヘマトパセオ」

この論文に注目!Focus On

2023年12月の注目論文

伊豆津宏二(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科 科長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2023年12月分(Vol. 1)は、伊豆津宏二氏が担当します。

Recent Bendamustine Treatment Before Apheresis Has a Negative Impact on Outcomes in Patients With Large B-Cell Lymphoma Receiving Chimeric Antigen Receptor T-Cell Therapy

J Clin Oncol. 2023 Oct 24:JCO2301097. doi: 10.1200/JCO.23.01097. Online ahead of print.

Iacoboni G, Navarro V, Martín-López AÁ, Rejeski K, Kwon M, Jalowiec KA, Amat P, Reguera-Ortega JL, Gallur L, Blumenberg V, Gutiérrez-Herrero S, Roddie C, Benzaquén A, Delgado-Serrano J, Sánchez-Salinas MA, Bailén R, Carpio C, López-Corral L, Hernani R, Bastos M, O'Reilly M, Martín-Martín L, Subklewe M, Barba P.

ここに注目!

CAR-T療法は、再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する治療として日本でも3種類承認され、徐々に実施施設・件数とも増えていると思われる。CAR-T療法を受ける患者で、アフェレーシス直前にベンダムスチンを含む治療を受けた場合、リンパ球数が減少し、CAR-T細胞の製造失敗のリスクが高くなることがこれまで知られていた。また、CAR-T細胞が製造され輸注に至った場合でもベンダムスチンがT-cell fitnessに影響を与え、CAR-T療法の効果を損なうと言われていた。濾胞性リンパ腫やマントル細胞リンパ腫を対象としたCAR-T療法ではそれを示唆するデータが報告されているが1)、最も患者数が多いDLBCLに対するCAR-T療法へのベンダムスチンの影響についてはこれまでデータが乏しかった。日本でも再発・難治性DLBCLに対してポラツズマブ ベドチン・ベンダムスチン・リツキシマブ併用療法が選択肢となっているが、直近でCAR-T療法を想定している場合にはこれを極力避けた方がよいということになるだろう。

1) Wang M , et al. J Clin Oncol. 2023; 41(3): 555-567.