特集B細胞リンパ腫をめぐる最新トピックスCAR-T療法や新規治療薬による治療成績向上への期待(1)B細胞リンパ腫は、患者数においてリンパ腫全体の3分の2以上を占め、血液内科医が診療する機会が多い疾患群であろう。ここでは、新規治療薬を中心としたトピックスに焦点を当て、それぞれの専門家に解説していただいた。まず、DLBCLのサブタイプの一つで予後不良とされるダブルヒットリンパ腫の分子病態とその治療の可能性、そして濾胞性リンパ腫に対する新規抗CD20抗体薬のオビヌツズマブの位置づけについての解説。次に、新しいWHO分類で遺伝子変異が診断に取り入れられ、わが国では適応外ながらブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬により治療体系が変わりつつある原発性マクログロブリン血症についての解説。最後に、最近、わが国で承認された新規治療薬から、再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対するCD19標的CAR-T療法である。いずれも血液内科医として知っておくべき重要なトピックスであろう。(責任編集 伊豆津宏二)
ダブルヒットリンパ腫の特徴的遺伝子を解明
新たな分子標的治療が視野に
遠西大輔(岡山大学病院 血液・腫瘍内科)
2019.07.25
ダブルヒットリンパ腫(DHIT)は、MYCとBCL2の遺伝子再構成を両方有するびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)で、2017年版のWHO分類で定義されたhigh-grade B-cell lymphoma(HGBL)の大部分を占め、予後不良である。我々は、カナダ・ブリティッシュコロンビア州における約350例のDLBCLから、DHITを特徴づける104の遺伝子を明らかにした。この研究結果を中心に、これまで明らかになったDHITの分子病態を概説し、今後を展望する。