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2020年6月の注目論文(Vol. 1)

柴山浩彦(大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学 准教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2020年6月分(Vol. 1)は、柴山浩彦氏が担当します。

Subcutaneous Versus Intravenous Daratumumab in Patients With Relapsed or Refractory Multiple Myeloma (COLUMBA): A Multicentre, Open-Label, Non-Inferiority, Randomised, Phase 3 Trial

Lancet Haematol. 7(5):e370-e380

Mateos MV, Nahi H, Legiec W, Grosicki S, Vorobyev V, Spicka I, Hungria V, Korenkova S, Bahlis N, Flogegard M, Bladé J, Moreau P, Kaiser M, Iida S, Laubach J, Magen H, Cavo M, Hulin C, White D, De Stefano V, Clemens PL, Masterson T, Lantz K, O'Rourke L, Heuck C, Qin X, Parasrampuria DA, Yuan Z, Xu S, Qi M, Usmani SZ

ここに注目!

抗CD38抗体薬のダラツムマブ(Dara)は、初発および再発・難治の多発性骨髄腫(MM)に対し、中心的薬剤として標準的に用いられるようになってきた。現在、Daraの投与は、16mg/kgを点滴静注(iv)で行なわれているが、点滴時間が長いこと、また、インフュージョンリアクション(IRR)を高率に認めることが問題となっている。Daraとヒアルロニダーゼを混合することで、1800mg/15mLを3〜5分かけて皮下注(sc)で投与することが可能となった。本研究では、再発・難治MMに対し、Dara scのivに対する非劣性を示す第Ⅲ相試験が行なわれ、有効性(奏効率、PFS、OS)や薬物動態の非劣性が証明された。また、IRRの頻度や程度はscにおいて、有意に減少した。以上の結果から、安全性や利便性の観点において、今後、Dara sc製剤がDara iv製剤に取って代わっていくと思われる。

Long-Term Follow-Up Results of Lenalidomide, Bortezomib, and Dexamethasone Induction Therapy and Risk-Adapted Maintenance Approach in Newly Diagnosed Multiple Myeloma.

J Clin Oncol. 2020 Apr 16:JCO1902515. doi: 10.1200/JCO.19.02515.

Joseph NS, Kaufman JL, Dhodapkar MV, Hofmeister CC, Almaula DK, Heffner LT, Gupta VA, Boise LH, Lonial S, Nooka AK

ここに注目!

初発MMに対するボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾン(VRd)併用療法の多数例(1,000例)の長期(中央値67カ月)の前向き観察研究の結果が報告された。移植前の寛解導入療法として、現在、標準療法として行なわれているVRd療法のReal-worldにおける最大規模のデータと考えられる。移植後の奏効率が98.5%、VGPR以上が89.9%、sCRが33.3%の患者で認められた。PFSの中央値が65カ月(ハイリスク:40.3カ月、標準リスク:76.5カ月)であった。また、OSの中央値が126.6カ月(ハイリスク:78.2カ月、標準リスク:未到達)であり、10年OSは、ハイリスクで29%、標準リスクで58%と予測された。このデータから、VRd療法によりMMの治療成績は飛躍的に改善されたと思われるが、新規治療薬によって、これ以上の治療成績を期待したい。

Daratumumab, Lenalidomide, Bortezomib, & Dexamethasone for Transplant-eligible Newly Diagnosed Multiple Myeloma: GRIFFIN.

Blood. 2020 Apr 23. pii: blood.2020005288. doi: 10.1182/blood.2020005288.

Voorhees PM, Kaufman JL, Laubach JP, Sborov DW, Reeves B, Rodriguez C, Chari A, Silbermann R, Costa LJ, Anderson LD, Nathwani N, Shah N, Efebera YA, Holstein SA, Costello C, Jakubowiak A, Wildes T, Orlowski RZ, Shain KH, Cowan AJ, Murphy SP, Lutska Y, Pei H, Ukropec J, Vermeulen J, de Boer C, Hoehn D, Lin T, Richardson PG

ここに注目!

移植適応のある初発MMに対する現在の標準治療は、VRdによる寛解導入後に、自家造血幹細胞移植併用の大量メルファラン投与の治療であるが、本臨床試験(第Ⅱ相)では、Dara併用による有効性と安全性を検証している。結果、Dara-VRdにより、移植後のsCR率が42.4%(VRdでは、32.0%)と上昇がみられ、移植後、2サイクルのDara-VRdによる地固め、およびDara-Lenによる維持療法(最大26サイクル)を行なうことで、sCR率は62.6%(vs 45.4%)まで上昇、さらにMRD陰性率(10-5レベル)は51.0%(vs 20.4%)と有意差をもってDara併用治療で高かった。また、2年PFSは、95.8%(vs 89.8%)であった。G3/4の血液毒性はDara併用群で多かったが、G3/4の感染症は同程度であり、プレリキサホールを用いることで、DaraによるPBSCHへの影響はなかった。長期の観察が必要であるが、Daraの併用が標準療法を変える可能性が示された。