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2019年12月の注目論文(Vol. 2)

伊豆津宏二(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科 科長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2019年12月分(Vol. 2)は、伊豆津宏二氏が担当します。

Prognostic impact of somatic mutations in diffuse large B-cell lymphoma and relationship to cell-of-origin: data from the phase III GOYA study.

Haematologica. 2019 Nov 14. pii: haematol.2019.227892. doi: 10.3324/haematol.2019.227892.

Bolen CR, Klanova M, Trneny M, Sehn LH, He J, Tong J, Paulson JN, Kim E, Vitolo U, Di Rocco A, Fingerle-Rowson G, Nielsen T, Lenz G, Oestergaard MZ

ここに注目!

未治療びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を対象としてR-CHOP療法とオビヌツズマブ併用CHOP療法を比較した第Ⅲ相試験の患者の診断時の病理検体で、ハイブリッドキャプチャー法により包括的な遺伝子解析(FoundationOne Hemeを用いる)を行なった結果が報告されている。一塩基変異(single nucleotide variants:SNV)、コピー数異常(copy number abnormalities: CNA)、染色体転座などの頻度と、予後に対する影響が示されている。DLBCLにおいて、包括的な遺伝子解析にもとづいて2つの分子的サブタイピングの方法が最近提唱されたが、このデータセットでそれも検証している。この第Ⅲ相試験自体はネガティブな結果であったが、今後の治療開発の基礎となる重要なデータをもたらしている。

Positron Emission Tomography–Guided Treatment in Early-Stage Favorable Hodgkin Lymphoma: Final Results of the International, Randomized Phase III HD16 Trial by the German Hodgkin Study Group.

J Clin Oncol. 37(31):2835-2845

Fuchs M, Goergen H, Kobe C, Kuhnert G, Lohri A, Greil R, Sasse S, Topp MS, Schäfer E, Hertenstein B, Soekler M, Vogelhuber M, Zijlstra JM, Keller UB, Krause SW, Wilhelm M, Maschmeyer G, Thiemer J, Dührsen U, Meissner J, Viardot A, Eich H, Baues C, Diehl V, Rosenwald A, von Tresckow B, Dietlein M, Borchmann P, Engert A

ここに注目!

ホジキンリンパ腫(HL)は若年での発症が多く、とくに限局期例では現在の治療により治癒の可能性が高いため、効果を保ちながら晩期毒性のリスクを下げるため、化学療法のサイクル数を下げる、放射線治療の範囲や線量を減らすといった強度減弱治療の開発が行なわれている。ドイツHL研究グループ(GHSG)の先行試験より、GHSGが定義する予後不良因子のない限局期HLでは、ABVD療法2コース+局所放射線治療20 Gyがより強力な治療と同等に良好な予後を示すことが明らかになっているが、今回報告されたHD16試験ではこの治療をもとにして、ABVD療法2コース後のPETで陰性(5ポイントスケールで3未満)の場合、放射線治療を省略できるかをみた非劣性試験である。その結果、非劣性は証明されず、限局期HLでは中間PETによる放射線治療の省略はできないということが分かった。一方、中間PET陽性(こちらは5ポイントスケールで4以上と定義)の場合にはPET陰性の場合と比較して予後不良で、放射線治療あるいは薬物治療において何らかの工夫が必要と考えられる。

Pembrolizumab in Relapsed or Refractory Primary Mediastinal Large B-Cell Lymphoma.

J Clin Oncol. 37(34):3291-3299

Armand P, Rodig S, Melnichenko V, Thieblemont C, Bouabdallah K, Tumyan G, Özcan M, Portino S, Fogliatto L, Caballero MD, Walewski J, Gulbas Z, Ribrag V, Christian B, Perini GF, Salles G, Svoboda J, Zain J, Patel S, Chen PH, Ligon AH, Ouyang J, Neuberg D, Redd R, Chatterjee A, Balakumaran A, Orlowski R, Shipp M, Zinzani PL

ここに注目!

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)全体を対象とした抗PD-1抗体単剤療法の第Ⅱ相試験では、奏効割合が自家移植後の患者で10%、自家移植非適応の患者で3%と、あまり期待できる効果は示されなかった。一方、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBL)では抗PD-1抗体の効果が高いことがペムブロリズマブの第Ⅰb相試験(KEYNOTE-013)のexpansion cohortで示唆され、再発・難治性PMBLを対象とした第Ⅱ相試験(KEYNOTE-170)でその結果が確認された。登録された患者では両試験とも中央値3ラインの治療歴があるような治療抵抗性の患者であったが、奏効割合はそれぞれの試験で48%、45%、完全奏効割合は33%、13%であった。この結果を根拠として再発・難治性PMBLに対するペムブロリズマブ単剤療法がFDAでは承認された。PMBLは、R-CHOP療法やDA-EPOCH-R療法などの初回治療により治癒しやすい病型であるが、再発・難治性例の治療には難渋することが多いため、抗PD-1抗体の役割は大きいと思われる。