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2019年8月の注目論文(Vol. 1)

宮﨑泰司(長崎大学 原爆後障害医療研究所 所長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2019年8月分(Vol. 1)は、宮﨑泰司氏が担当します。

Quizartinib versus salvage chemotherapy in relapsed or refractory FLT3-ITD acute myeloid leukaemia (QuANTUM-R): a multicentre, randomised, controlled, open-label, phase 3 trial.

Lancet Oncol. 20(7):984-997

Cortes JE, Khaled S, Martinelli G, Perl AE, Ganguly S, Russell N, Krämer A, Dombret H, Hogge D, Jonas BA, Leung AY, Mehta P, Montesinos P, Radsak M, Sica S, Arunachalam M, Holmes M, Kobayashi K, Namuyinga R, Ge N, Yver A, Zhang Y, Levis MJ

ここに注目!

急性骨髄性白血病(AML)においてFLT3遺伝子の内部縦列重複変異(FLT3-ITD)を有する例は予後不良である。本試験は、18歳以上の化学療法または同種造血幹細胞移植後の再発、難治FLT3-ITD陽性AMLに対してFTL3-ITDのタイプⅡ経口阻害薬であるquizartinib(同種造血幹細胞移植が実施されればその後のquizartinib使用も許容)とサルベージ化学療法(低用量シタラビン、MEC、大量シタラビン、FLAG-Idaから選択)の有用性を比較した(2:1割付)無作為割付第Ⅲ相試験である。主要評価項目は全生存とされた。367名が登録され(quizartinib群245名、化学療法群122名)、観察期間中央値23.5カ月時点での生存期間中央値はquizartinib群6.2カ月、化学療法群4.7カ月であり(ハザード比0.76 [95% CI 0.58-0.98; p=0.02])、quizartinib群が有意に優れていた。Quizartinib群の有害事象としては感染症関連(敗血症、肺炎、発熱性好中球減少症など)、心電図QTc延長等がみられた。本試験より、quizartinibがFTL3-ITD陽性の再発、難治AMLに対する有用な治療薬であると示された。新たなFLT3-ITDに対する薬剤として期待される結果である。

Prognostic impact of circulating tumor DNA status post-allogeneic hematopoietic stem cell transplantation in AML and MDS.

Blood. 133(25):2682-2695

Nakamura S, Yokoyama K, Shimizu E, Yusa N, Kondoh K, Ogawa M, Takei T, Kobayashi A, Ito M, Isobe M, Konuma T, Kato S, Kasajima R, Wada Y, Nagamura-Inoue T, Yamaguchi R, Takahashi S, Imoto S, Miyano S, Tojo A

ここに注目!

本研究は骨髄破壊的前処置を用いた同種造血幹細胞移植後の再発リスクと移植後の血漿中の腫瘍特異的DNA残存との関連を検討したもので、本邦からの報告である。骨髄破壊的前処置後に同種造血幹細胞移植が実施された53例の急性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群のうち、腫瘍特異的遺伝子変異が同定できた51例を検討している。移植後1、3カ月で骨髄(MP1およびMP3)と血漿(CP1およびCP3)を採取し、症例ごとに設定した腫瘍特異的遺伝子変異に対するPCRによってその残存を検討した。その結果、これらのPCRでの腫瘍特異的遺伝子変異陽性は、いずれの検討においても3年累積再発率と有意に相関していた(MP1陽性vs陰性、72.9% vs 13.8% [P=0.0012]; CP1陽性vs陰性、65.6% vs 9.0% [P=0.0002]; MP3陽性vs陰性、80% vs 11.6% [P=0.0002]; CP3陽性vs陰性、71.4% vs 8.4% [P<0.0001])。これらは同種造血幹細胞移植後の血漿中の腫瘍特異的遺伝子変異の残存が移植後再発予測因子として有用なことを示している。

RUNX1-targeted therapy for AML expressing somatic or germline mutation in RUNX1.

Blood. 134(1):59-73

Mill CP, Fiskus W, DiNardo CD, Qian Y, Raina K, Rajapakshe K, Perera D, Coarfa C, Kadia TM, Khoury JD, Saenz DT, Saenz DN, Illendula A, Takahashi K, Kornblau SM, Green MR, Futreal AP, Bushweller JH, Crews CM, Bhalla KN

ここに注目!

転写因子RUNX1は正常並びに腫瘍性造血に重要で、その変異は急性骨髄性白血病(AML)においては予後不良と関連している。RUNX1遺伝子の発現を抑制すると、野生型RUNX1を発現するAMLよりも変異型RUNX1の発現例でよりアポトーシスが誘導され、変異RUNX1白血病細胞を移植したマウスの生存を延長する。RUNX1のスーパーエンハンサーの欠失変異や、これと関与するBETタンパク質であるBRD4の発現抑制、BET蛋白阻害薬、BET蛋白変性促進も同様の効果を示す。そこで米国NIHによって作製されたThe Library of Integrated Network-based Cellular Signatures(LINCS)データを用いて変異RUNX1をもつ細胞でRUNX1発現を抑制した場合と類似したmRNAシグネチャーをもたらす物質(expression-mimicker:EM)を検索した。EMであるcinobufagin、anisomycinおよびnarciclasineは、家族性血小板減少症や正常の造血前駆細胞と比較して、胚細胞系列に変異RUNX1を有するAML患者の造血前駆細胞により高い殺細胞性を示した。これらの結果は変異RUNX1を有するAMLに対する新たな治療薬の可能性を示しているとともに、EM探索という興味深い薬剤開発方法を提示していると言えるだろう。